岡田麿里が榎木淳弥、瀬戸康史ら『アリスとテレスのまぼろし工場』声優陣に感謝!「一緒にキャラクターを生みだしていただいた」
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」など数々の傑作アニメを生みだしてきた脚本家の岡田麿里が、『さよならの朝に約束の花をかざろう』(18)以来5年ぶりに自らメガホンをとった『アリスとテレスのまぼろし工場』(公開中)。本作の公開記念舞台挨拶が16日に新宿ピカデリーにて開催され、ボイスキャストを務めた榎木淳弥と上田麗奈、久野美咲、瀬戸康史、林遣都、そして岡田麿里監督が登壇した。
物語の舞台は製鉄所の爆発事故によって出口を失い、時まで止まってしまった町。14歳の正宗(声:榎木)は、いつか元に戻れるようにと“なにも変えてはいけない”ルールができたこの町で、鬱屈とした日々を過ごしていた。そんなある日、気になる存在の謎めいた同級生・睦実(声:上田)に導かれ、製鉄所の第五高炉へ足を踏み入れる正宗。そこにいたのは、言葉を話せない野生のオオカミのような少女・五実(声:久野)だった。
主人公の正宗役を演じた榎木は、自身が演じた役柄について「世界のどこかにいそうな人物像で、リアリティのあるキャラクター」と説明すると、「時が止まってしまって、変わっちゃいけないという設定はファンタジーだけど、現実世界でも学校や社会などで変わっていくことを押さえつけられることがある。そのなかで僕自身も悔しい思いをしたことがあるので、共感しながら役に臨んでいました」と振り返る。
一方、冒頭の挨拶から「岡田麿里さん、MAPPAさん、ありがとうございます。声優デビューでございます」と会場の笑いを誘った瀬戸は、正宗の父親である昭宗役を担当。大のアニメ好きだという瀬戸は「声優陣の皆さんの声を聞くたびに“あの声だ!”とワクワクして、すっかりファン目線。いまも客席に座りたいぐらいです」と笑みを浮かべる。
そして「声優のお話が来た時には、本当に僕でいいのだろうかと思いました。完成した作品を観ても、良いのか悪いのか、馴染んでいるのかどうかもよくわからず、普段やっているお芝居とも違うので、観客の皆さんがどういう感想を持たれるのかドキドキしながら今日を迎えています」と述懐すると、会場からは瀬戸の演技を讃えるような大きな拍手が。すると「前向きな感じで声のお芝居もやっていきたいので、MAPPAさんよろしくお願いします」と茶目っ気たっぷりにアピール。
また、久々のアニメ声優挑戦となった林は、正宗の叔父の時宗役。「まだ全部の画が見えていない状況で、時宗のすべてを知って演じるのは難しかった」と振り返り、「でも岡田さんが書かれた台詞を発していくなかで、どこか自己犠牲の精神のようなものを感じ、守りたいもののためだったり、自分が貫きたい信念のために行動していくところに魅力を感じました」と、演じたキャラクターの魅力を語った。
そんなボイスキャスト陣に対して岡田監督は「最後まで画が揃いづらい状況でしたが、皆さんの声とあわさって1人のキャラクターになると考えていたので、皆さんの演技をいただいてから画に活かしたいという思いがありました。皆さんが思うようにやっていただいたら、こちらも刺激を受ける。皆さんには声をやっていただいたというより、一緒にキャラクターを生みだしていただいたと感じています」と感無量の面持ちで感謝を述べた。
その後、劇中に登場する“自分確認票”にちなみ、登壇者たちは互いの将来の夢を発表していくことに。「家族に囲まれて死ぬこと」と書く榎木や「ネコちゃんとハッピーに暮らす」と書く上田、「毎日笑顔でのんびり暮らす」と書く久野に、瀬戸も「幸せに暮らす」と、ほっこりした回答が続くなか、林だけは「リニア中央新幹線に乗りたい」と少年のような夢を発表し会場は大爆笑。そして締めを飾った岡田が「何十年先もアニメを作っていたい」と答えると、ボイスキャスト陣や観客からあたたかな拍手が贈られていた。
取材/編集部 文/久保田 和馬