映像も音も本物志向な『沈黙の艦隊』は“IMAX推し”!静寂な深海での潜水艦バトルを全力で体感

コラム

映像も音も本物志向な『沈黙の艦隊』は“IMAX推し”!静寂な深海での潜水艦バトルを全力で体感

巨大なクレーンで吊るして撮影!“国家機密事項"を再現した潜水艦内部

沈黙の艦隊」の代名詞と言えば、なんといっても“潜水艦”。本作では、防衛省と海上自衛隊の協力によって、日本映画として初めて実物の潜水艦を撮影に使用することが許可された。とはいえ潜水艦の内部は重要な国家機密事項。それでも潜水艦が潜るシーンで実際にカメラを潜水艦上部に搭載して撮影が行われるなど、随所にあふれる“本物志向”が潜水艦ファンの心をわしづかみにしていく。

日本映画初!本物の潜水艦が撮影に使用されている
日本映画初!本物の潜水艦が撮影に使用されている[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

緊張感あふれる潜水艦同士の攻防は、閉鎖感に包まれた艦内が主な舞台となる。撮影前に本物の潜水艦の取材をしたスタッフは、写真を撮ることが許されなかったため、その目で見た内部の様子を参考にしながらセットとしてデザイン。また、“動かない”海江田が指揮する「シーバット」は、最新鋭原潜という未知なる存在への想像力を膨らませながら生みだされたという。一方で、“動き回る”深町のディーゼル潜水艦「たつなみ」の窮屈さとの対比も見逃せないポイントで、両者の内部構造やディテールもIMAXの大スクリーンなら余すところなくチェックすることができる。

「たつなみ」の内部は潜水艦らしい閉塞感
「たつなみ」の内部は潜水艦らしい閉塞感[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

この潜水艦内部を再現したセットは、劇中で幾度も訪れる傾きや浮上感を表現するために、なんと巨大なクレーンで吊るされながら撮影が行われたという。そして内部の空間をよりハイスペックな映像体験として見せるために採用されたのは、新型カメラ「ALEXA35」。これによってフィルムのような諧調表現とリッチな色再現が可能になり、ハイライトと暗部の表現も最大限に発揮される。まさにハリウッド大作に引けを取らない撮影機材と創意工夫によって、力強い映像が生み出された。

激しいバトルとの対比も必見!神秘的な海中を実現したCG表現

迫力満点の潜水艦がスクリーンを画面いっぱいに潜航する
迫力満点の潜水艦がスクリーンを画面いっぱいに潜航する[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

そしてメガホンをとった吉野監督と言えば、キャラクターを的確にとらえエモーショナルなドラマを作りだすなど、その演出力の高さに定評がある。キャリア初の超大作となった本作でも、海江田という人物に込められた二面性や、彼の行動をめぐる大勢の人々の心理を巧みに捌いていくと同時に、ビジュアル面でも吉野監督ならではの強みが活かされた。

吉野耕平監督作品の常連である中村倫也は、入江蒼士役を演じる
吉野耕平監督作品の常連である中村倫也は、入江蒼士役を演じる[c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

というのも、吉野監督は社会現象を巻き起こした新海誠監督の『君の名は。』(16)にCGクリエイターとして参加した経歴の持ち主。本作では、光が入ってこない水中で凹凸の少ない潜水艦を見せるという、CGでは難易度の高い表現に対し、マリンスノー(浮遊物)を配置することで潜水艦の動きや重みを表現する方法を選択している。それによって海中の世界観がより神秘的に映り、激しいバトルシーンとの対比も生まれている。IMAXの巨大スクリーンで味わえば尚更に、一度観たら忘れられない美しさだ。

“潜水艦映画”のジャンルに日本から新たな傑作が加わる!
“潜水艦映画”のジャンルに日本から新たな傑作が加わる![c]かわぐちかいじ/講談社 [c]2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.


こうして実物とCGを融合したことで、迫力満点の潜水艦表現が実現。そこにIMAXのハイスペックな上映環境が加わることで、質感から内部の息苦しさまで臨場感たっぷりに擬似体験ができるはず!ウォルフガング・ペーターゼン監督の『Uボート』(82)をはじめ、これまで世界中で数々の傑作が生まれてきた“潜水艦映画”というジャンルに、胸を張って加わることができる日本映画がついに誕生したのだ。


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