カップルの「その先」を夢想!LGBTフレンドリーな社会についても学べる台湾BLドラマの世界 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
カップルの「その先」を夢想!LGBTフレンドリーな社会についても学べる台湾BLドラマの世界

コラム

カップルの「その先」を夢想!LGBTフレンドリーな社会についても学べる台湾BLドラマの世界

ホラーも甘いラブシーンも楽しめる「Stay By My Side」

「We Best Love」のように反発し合う2人がやがて恋仲になってゆくというプロットは学園もののBLドラマでは定番だといえるが、その系譜に連なるのが「Stay By My Side」(23)。このドラマはオリジナルBLドラマ企画「VBLシリーズ」(Vidol Boys Love)の学園系、スーツ系、ヒーリング系、AI系の4部作のうち、第1部の学園系にあたる。

ブーシアとチーは運命的に出会う(「Stay By My Side」)
ブーシアとチーは運命的に出会う(「Stay By My Side」)[c]2023 “VBL Series“ Partners All Rights Reserved.

宗廟育ちのグー・ブーシア(ホン・ウェイジョー)は、姉が霊符の角を不注意で焼いてしまったことから幽霊たちの声が聞こえるようになってしまう。彼はもともと幽霊が苦手だったが、新しいルームメイトであるジャン・チー(ヤン・イーシュエン)に偶然しがみついたところ、なぜか彼に触れていれば幽霊の声が聞こえなくなることに気づく。そうしてブーシアは幽霊の声から逃れるために、それを隠してチーに接近してゆく。天真爛漫で明るい彼は、チーの体の上に散らばったスナック菓子を無邪気に口で食べてゆくなど、時に大胆な行動でクールに見えるチーの心を振り回す。一方、ほかに目的があるとは露知らないチーは自分に近づいてきた彼の時々見せる怖がる表情にほっておけなくなる。チーがさりげなくバイクの小さなフロントミラーに映ったブーシアを愛しそうに一瞥する姿など、「Stay By My Side」は距離を縮める2人を細やかに描いてゆく。陽光が降り注ぐなか、タオルで目隠ししたブーシアにチーがキスするシーンなど、ホラー要素があるとはいえ、甘いラブシーン満載なのもこのシリーズの魅力の一つになっている。

全然違う2人は徐々に惹かれ合っていく(「Stay By My Side」)
全然違う2人は徐々に惹かれ合っていく(「Stay By My Side」)[c]2023 “VBL Series“ Partners All Rights Reserved.


台湾BLドラマを観れば台湾、日本の「いま」が見えてくる

日本ではBL映画『チェリまほ THE MOVIE 〜30 歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜』(22)の劇場公開に際して、作者の豊田悠が原作使用料の一部を結婚の平等の実現を目指す団体である「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」に寄付したことを公表した。こうしたアクションがメッセージを発信するように、BL文化もまたこの社会に実際に生きている性的マイノリティの人権や権利と決して無関係ではないという意識は近年ますます強まっている。台湾はキリスト教関連の保守団体を中心に苛烈なバックラッシュに遭いながらも「LGBTフレンドリー」として世界的に認知され、ジェンダーやセクシュアリティに関わるイシューにおいて日本やほかのアジア諸国を牽引している。

アジアで初めて同性間の婚姻を法制化した台湾ならではの物語が描かれている「正負之間~Plus & Minus」
アジアで初めて同性間の婚姻を法制化した台湾ならではの物語が描かれている「正負之間~Plus & Minus」[c]2022 Plus and Minus _ Partners All Rights Reserved.

2023年8月に日本でも公開になった台湾クィア映画『僕と幽霊が家族になった件』(公開中)は「Stay By My Side」と同じく幽霊を扱うコメディ作品だが、事故死してしまい同性パートナーとの結婚が果たせなかったゲイの幽霊が「それまでは“いま”を楽しむだけしかなかったのに、同性婚が可能になってからは“生涯を共にする”という選択肢が生まれた」と語る。その言葉通り、同性間における婚姻の法制度化はそうして同性カップルに新たな可能性と選択肢を与える。婚姻制度そのものに対する是非はあれど、同性間の婚姻を認めない法制度は同性カップルを異性カップルと区別し、差別が社会において厳然としてあることを発信してしまう。台湾BLドラマを観る醍醐味とは、まずそうした社会的土壌のなかで観られるところにもある。それは創造的果実となり、ドラマが終わったあとも描かれた2人の「その先」まで、私たちに夢想させてくれるものにほかならない。

文/児玉美月


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