山崎貴が“怪獣造形のレジェンド”村瀬継蔵とキングギドラについて語り合う!「シルエットが天才的」
ゴジラ生誕70周年を記念して製作される『ゴジラ-1.0』(11月3日公開)。その公開に先駆け、同作で監督・脚本・VFXを務める山崎貴監督が厳選した「ゴジラ」作品を全4回にわたって隔週で1作品ずつ上映する「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」。その第2回が9月29日に池袋HUMAXシネマズで行われ、『三大怪獣 地球最大の決戦』(64)が35ミリフィルムで上映。上映前のトークショーに山崎監督と、造形作家の村瀬継蔵が登壇した。
第1回では記念すべきシリーズ第1作の『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』が上映された当企画。第2回で『三大怪獣 地球最大の決戦』を選んだ理由を訊かれた山崎監督は「僕にとって因縁の作品なんです…」と、苦い思い出を語りはじめる。
「1964年は僕が生まれた年。小学3年生の時に家のお風呂が壊れて家族で銭湯に行くことになり、そこにこの作品のリバイバル上映のポスターが貼ってあったんです。それを見る限り、どうやら松本城を壊すらしい。松本出身なのでとにかく観たくて、父に『もう他に映画を観せてくれなくていいからこれだけは連れてってくれ』とお願いして観に行きました。うれしかったのですが、それ以降、父は『約束だから』と一切映画に連れて行ってくれなくなりまして、クラスのみんなが『ジョーズ』も『タワーリング・インフェルノ』も観てるのに僕だけ連れてってもらえなかった…全部この『三大怪獣』のせいです」と悔しそうな表情。会場は早速爆笑に包まれる。
一方、1958年に東宝に入社した造形界のレジェンド的存在である村瀬は現在89歳。『大怪獣バラン』(58)や『モスラ』(61)、昭和「ゴジラ」シリーズの作品などの東宝特撮はもちろんのこと、『大怪獣ガメラ』(65)や「大魔神」シリーズなどの大映制作の特撮作品、日韓合作の『大怪獣ヨンガリ』(67)や香港で製作された『北京原人の逆襲』(77)など、アジアを股にかけて怪獣の造形を手掛けてきた。
「円谷さんはとても優しい方で、いつも新しいものが非常に好きで、アイデアを出したらそれに対して意見を与えてくれました。私にとってとてもいいお父さんでした」と、本作で特技監督を務めた円谷英二との思い出を語りはじめる村瀬。「造形の部屋に来て話をしてくれて、私が『こういうのはどうですか?』とサンプルを作ってみせると非常に感心してくださり、『新しいことをどんどん開発してくれることがうれしいから一生懸命やってくれ』と言われたので、その言葉通り一生懸命働いてきました」と振り返る。
この『三大怪獣』といえば、キングギドラが初めてスクリーンに登場した作品としても知られている。その造形を担当した村瀬は「とにかく体が大きいから、重さも加わってしまう。ウロコを一枚一枚ラテックスで作り、一枚一枚貼っていきました。監督からは羽根をできるだけ柔らかく動かせないかと言われ、竹材を削り骨を作り、火で温めて癖をつけて冷やして羽根の形ができて、そこに白いキャンバスの生地を貼って作っていきました」と、ゼロから怪獣を作りあげていく苦労を語る。
そうして生まれたキングギドラについて山崎監督は「怪獣ってやはりシルエットなんです。キングギドラはシルエットが天才的で、ドラゴンの神々しさも持っていて、とにかくすごい」とベタ褒め。さらに、劇中では全身金色の荘厳なビジュアルをしているキングギドラが、当時のポスターだけ紫色のグラデーションの羽根になっている真相を訊かれた村瀬は「私は自分で塗装していないので、全然わからないんです」と申し訳なさそうに説明した。
その後も当時の怪獣造形に作り方や、ゴジラの歯や爪を樹脂素材に変えた時の材料探しのエピソードなど貴重な裏話を次々と披露していった村瀬。かつて香港で『北京原人の逆襲』を制作していた際に書きあげた脚本を、40年以上の年月を経て自らのメガホンで映画化する『神の筆』(2024年公開)を現在制作中とのことで、その特報映像に登場するヤマタノオロチについて訊かれると「初稿には出てこなかったので、なんで出てたのかな…」と茶目っけたっぷりにつぶやき、笑いを誘う。
そんなレジェンドを前に終始にこやかな表情を浮かべていた山崎監督は最後に、「今日は村瀬さんにお会いできて本当にうれしいです」と改めてお礼を述べると、このトークの後に上映される『三大怪獣』について「途中でゴジラたちがお話をするんです。大人になって観ると愛らしくて愛らしくて、こんなに愛らしい怪獣の世界があったのかと素敵な作品」とその魅力を熱弁していた。
「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」は10月にも隔週金曜日に開催。第3回と第4回の上映作品は、10月3日(火)に発表される。
取材・文/久保田 和馬