玉山鉄二&大塚明夫“2人の次元大介”が明かす、国民的キャラを演じるプレッシャーと仲間との絆
「小栗くん、綾野くんとは運命共同体のようだった」(玉山)、「吉田鋼太郎の存在にいつも励まされています」(大塚)
――玉山さんが9年前に実写映画『ルパン三世』で国民的キャラクターである次元役に挑む際には、大きなプレッシャーがあったのではないでしょうか。
玉山「やはり皆さんには次元に対するそれぞれのイメージ、それぞれの思い入れがあると思うので、批判も覚悟したうえで次元役をお引き受けしました。ルパン役の小栗(旬)くん、石川五ェ門役の綾野(剛)くんをはじめ、 みんながそういった覚悟を持っていたと思います。そういう意味では、運命共同体のよう。タイやラオス国境近くにもロケに行きましたが、運命共同体となったみんなで士気を高め合って、撮影に臨んでいたことをいまでもよく覚えています」
――大塚さんは、玉山さんのように仲間の存在が励みになったことはありますか?
大塚「アフレコ現場には、先代から役を受け継いだ2代目のみんながいます。『叩かれるんじゃないかとか、いろいろな不安もみんなが経験してきたことだから、大丈夫だよ』と声をかけてくれました(笑)。栗さん(ルパン役の栗田貫一)が役を引き継いだ時は、特に大変だったんじゃないかな。初めて栗さんがルパンを演じた『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』には、実は僕も出演しているんですよ。当時は、納谷悟朗さん、小林清志さんもご存命でね。そのなかで途方に暮れている栗さんの横顔を、スタジオの外から『栗さん、頑張れ!』と応援しながら見ていました。あの姿は、ものすごく目に焼き付いています。栗さんはその後、『リトルリーグの少年が急に大リーグのマウンドに上がったような気がした』と当時の心境を語っていました」
――次元といえば、ピンチに直面した時に彼が放つ「おもしろくなってきやがった」という名セリフも、とても印象的です。お2人はピンチも楽しもうとする次元の精神性に共感はありますか。
大塚「しんどい時にジョークを言ったり、笑っているヤツが強いと感じることはありますね。笑うことによって追い詰められている苦しさを解放したり、さらに立ち向かう力にできるというのは、とてもカッコいいですよね。どう見ても『そんなことを言っている場合じゃないだろう』という状況で、次元が『おもしろくなってきやがった』と言うと、ものすごくワクワクしますから。僕ももともとそういうところがあって。いつも、『どんなことがあっても、死にゃあしない』という札を心に持つようにしています。そうすると自分を鼓舞する時にとても便利なんですよ」
玉山「大塚さんのお話を聞いていて、僕はまだまだ未熟だなと思いました。僕は真逆な感じで、すごくネガティブだし、いろいろなことを悩み抜いてしまうんです。悩み癖があるんですね。おそらく感覚で行動するというよりも、いろいろなことを頭で考えてロジカルに答えを導きだせないと、どこか消化不良の自分がいたりする。それは僕が、きっとまだ成熟していないということなのかなと。いままで『この仕事は楽だったな』と思ったことはありませんし、いつもボロボロになって終わるという感じです(苦笑)」
大塚「そういう時につぶやくんです。『死にゃあしない』って。ぜひ試してみてください」
玉山「いいですね、それ(笑)」
――表現という正解のない世界に身を置く俳優業は、やはりとても大変なお仕事のように感じます。お2人にとって、「この人を見ていると、励まされる」と思わせてくれる人はいますか?
玉山「僕は本当に孤独で…(苦笑)。悩んでいることを誰かと共有することもないですし、いつも作品と演じるキャラクターに向き合うことで、いっぱいいっぱい。自分1人で考え、悩みと向き合っているという感じです。そんな僕を励ましてくれるのは、やっぱり作品が完成した時。達成感を味わいつつも満足することはないので、こうやって進んでいくしかないのかなと思っています」
大塚「本作の次元の背中にも、(孤独の)“孤”という文字が見えるような気がしますね」
玉山「あはは!」
――大塚さんはいかがでしょうか。
大塚「僕は、先輩にもそういった方がいますし、後輩を見ていて『こいつの成長ぶりはすごいな、目をみはるな』と追い立てられる時もあります。特に僕は、若いころから吉田鋼太郎と一緒にシェイクスピアのお芝居などをいろいろとやっていて。どうあがいても、板の上では吉田鋼太郎に太刀打ちできないなと思うんです」
玉山「僕もいつもエネルギッシュな鋼太郎さんを見ていると、うらやましいなと思います」
大塚「僕がここまで調子に乗らずにやってこられたのは、ああいう芝居のお化けみたいな人がそばにいたから(笑)。だからこそ、一生懸命に走り続けてこられたのかなと思っています」
取材・文/成田おり枝