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「生きなきゃと思いました」という10代の感想も。今日マチ子の「cocoon」が、この時代に上映される意義

インタビュー

「生きなきゃと思いました」という10代の感想も。今日マチ子の「cocoon」が、この時代に上映される意義

「知らない世代が創造の力で手を伸ばす、その姿勢がとても大事だと思います」

一方で、思ってもみなかった受け取られ方をしたこともあった。「10代の子からシンプルで素直な感想をもらえることも。舞台を思い切り走ったり叫んだり、そのさまを戦争ではなく自分と結びつけて『頑張って生きてみようと思いました』と言ってくれたことがあって、うれしくなりました」と噛みしめた。今日自身、本作は戦争を知らない世代にも届いてほしいという想いが強かったと話す。

沖縄のひめゆり学徒隊に着想を得て描かれた「cocoon」
沖縄のひめゆり学徒隊に着想を得て描かれた「cocoon」著/今日マチ子 発売中 秋田文庫 価格:583円(税込) ‎ 秋田書店刊

「出来事を語れる人が戦争体験者のみに縛られると、忘れ去られてしまう危険があります。多少フィクションが混ざっていたとしても、知らない世代が創造の力で出来事に手を伸ばそうとする、その姿勢がとても大事だと思います。知らないことはアドバンテージであり、創造において自由だということを、私が見せたかった」。しかし、戦争という事柄の特性上「自分の中の正しい戦争感」と異なる描写に、怒りを露わにする観客も少なくなかったという。「私は決して正解を示そうとしたわけではありません。反論はあって当然ですが、私たちができる限りの想いを馳せようとした結果の物語だと受け止めてもらいたいです」と作品への想いを語った。


コロナ禍の「#わたしのstayhome日記」をはじめ、大きな出来事と向き合い、作品にしてきた今日マチ子。その創作の原動力は「自分がいま、この時代にいる意味とはなんだろう」という疑問から始まっているという。「漫画家を生業にする人として、その時代に自分がやるべきことをやりたいという思いが強いのかもしれないです。もし江戸時代にいたら、全然別のことをやっていたはず。自分の手が届かない大きなことと、小さな“自分”という存在をどうにかつなげたいという気持ちが、いつもあります。歴史の教科書の中だけで終わらせたくないんです。歴史と自分は地続きなので、その気持ちで創作に向かっています」。

 【写真を見る】上映後、原作者が「思わず演者さんに『おつかれさまでした』と声をかけてしまった」ほどの臨場感!?
【写真を見る】上映後、原作者が「思わず演者さんに『おつかれさまでした』と声をかけてしまった」ほどの臨場感!?撮影:岡本尚文

そうして生みだされた「cocoon」という作品が映像化されることで、今日は「届けられる範囲が広がってうれしい」と期待する。「時間的な制約もあって、舞台を観られる人はごく少数でした。実際友だちに声をかけたくても、小さな子どもがいる人やお金が払えない若い子を誘いづらかったので、映像なら気軽ですよね。私自身も『マライの虎』など気になる作品が東京芸術祭で上映されるので、ふらっと行きたいと思います」。

取材・文/羽佐田瑶子

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