『ブレードランナー』や『AKIRA』などから影響を受けた!?名作のエッセンスを含んだSF大作『ザ・クリエイター/創造者』をひも解く!

コラム

『ブレードランナー』や『AKIRA』などから影響を受けた!?名作のエッセンスを含んだSF大作『ザ・クリエイター/創造者』をひも解く!

異なる存在同士が絆を育んでいく『ペーパー・ムーン』のような関係性

旅を通して絆でつながれていくジョシュアとアルフィー。2人の関係性についてエドワーズが参考にしたのが、『ペーパー・ムーン』(73)や『殺し屋たちの挽歌』(84)、『レインマン』(88)といったロードムービーだ。人質にした少女に心惹かれ自滅していく殺し屋を描いた『殺し屋たちの挽歌』、自閉症の兄との旅で家族とはなにかを知る男を描いた『レインマン』は、どちらもエドワーズがリアルタイムで触れた作品だろう。しかし本作とのつながりを最も感じるのが『ペーパー・ムーン』だ。恐慌時代を背景に、母を亡くした孤独な少女アディがペテン師モーゼと旅をする物語。当初いがみ合っていた2人は、旅を続けるなかで本当の父娘になっていく。いつもしかめっ面のアディ(当時10歳のテイタム・オニールがアカデミー賞助演女優賞を獲得)が時折見せる笑顔のインパクトは、アルフィーにも通じている。

『ペーパー・ムーン』における大人の男性と少女が父娘のような絆を育んでいく姿がジョシュアとアルフィーに重なる
『ペーパー・ムーン』における大人の男性と少女が父娘のような絆を育んでいく姿がジョシュアとアルフィーに重なる[c]Everett Collection/AFLO

ロードムービー以外にエドワーズは『E.T.』(82)も挙げている。こちらは異星から来た親友を守るため、大人たちに立ち向かうエリオット(ヘンリー・トーマス)たちチビっ子の姿か。振り返ればデビュー長編『モンスターズ 地球外生命体』(10)で怪獣から逃げる男女の関係性でドラマを盛り上げており、『GODZILLA』では妻子のために決死のミッションに挑むブロディ大尉(アーロン・テイラー=ジョンソン)の活躍を描き、『ローグ・ワン』でもジン(フェリシティ・ジョーン)とゲイレン(マッツ・ミケルセン)父娘の熱きドラマを展開した。『ザ・クリエイター』も核にあるのは家族の絆で、そういう意味で本作も実にエドワーズらしい作品といえる。

アルフィーと出会ったジョシュアは彼女を守る決意をする(『ザ・クリエイター/創造者』)
アルフィーと出会ったジョシュアは彼女を守る決意をする(『ザ・クリエイター/創造者』)[c]2023 20th Century Studios

『エリジウム』『チャッピー』にも通じる衛星基地やロボット兵たち

エドワーズが公言している以外にも本作には多くの映画の要素が見て取れるが、『エリジウム』(13)の影響について言及しておきたい。エドワーズと同世代の映画監督ニール・ブロムカンプによるこの作品は、貧富の二極化をゴミ溜めのような地球と天国のような衛星軌道上のコロニー、エリジウムを通して描いた物語。『ザ・クリエイター』では、地上とアメリカが建造した要塞のような軌道上の攻撃基地ノマドを“現世と天国”に例えているのがおもしろい。また、本作のロボット型AIのなかに『エリジウム』の警官ロボを思わせる個体や、同じブロムカンプの『チャッピー』(15)そっくりな個体が登場する。両作品とも造形は本作と同じWETAワークショップが手掛けているので、一部ボディやパーツを参考にしたのかもしれない。

富裕層が暮らす地球の衛星軌道上のコロニーとスラム化した地上の対比が描かれる『エリジウム』
富裕層が暮らす地球の衛星軌道上のコロニーとスラム化した地上の対比が描かれる『エリジウム』[c]Everett Collection/AFLO

『チャッピー』に登場する人工知能を搭載した感情表現豊かなロボット
『チャッピー』に登場する人工知能を搭載した感情表現豊かなロボット[c]Everett Collection/AFLO

「ゴジラ」「スター・ウォーズ」とワールドワイドな知名度を誇る超大作を続けて手掛けたエドワーズが、久しぶりにオリジナルストーリーに挑んだ『ザ・クリエイター/創造者』。好きなものだけ詰め込んだような本作は、ギャレス・エドワーズのショウケースと呼ぶべき作品なのだ。

文/神武団四郎

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