『ブレードランナー』や『AKIRA』などから影響を受けた!?名作のエッセンスを含んだSF大作『ザ・クリエイター/創造者』をひも解く!

コラム

『ブレードランナー』や『AKIRA』などから影響を受けた!?名作のエッセンスを含んだSF大作『ザ・クリエイター/創造者』をひも解く!

『地獄の黙示録』とも重なる壮絶な戦場の描写

ニルマータのラボを探すため、泣き叫ぶ農民たちを銃で脅し彼らの農地に容赦なくミサイルを撃ち込む兵士たち。その光景はフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』の戦慄を思い起こさせる。『ローグ・ワン』で戦争の記録映像をイメージしたリアルな戦闘シーンを盛り込み話題を呼んだエドワーズ。アジア圏を舞台にした本作でも、ロケーションを含めベトナム戦争をそのまま再現したような迫真の映像が味わえる。

『地獄の黙示録』のような農地を焼く空爆シーンも
『地獄の黙示録』のような農地を焼く空爆シーンも[c]Everett Collection/AFLO

また、かつてニューアジアでのミッション中に出会ったマヤ(ジェンマ・チャン)と結ばれたジョシュアだが、物語の冒頭で自軍の爆撃で彼女を亡くしたことで軍を辞め、空虚な日々を送っていた。そんな彼が暗殺作戦に参加した理由は、軍からマヤの目撃情報を伝えられたこと。妻への想いを募らせながら旅をするジョシュアの姿は、ジョセフ・コンラッドによる『地獄の黙示録』の原作「闇の奥」の主人公に重なって見える。


ジョシュアの子どもを身ごもりながら米軍の攻撃で消息不明となったマヤ(『ザ・クリエイター/創造者』)
ジョシュアの子どもを身ごもりながら米軍の攻撃で消息不明となったマヤ(『ザ・クリエイター/創造者』)[c]2023 20th Century Studios

水墨画のような幻想的な風景も

本作はネパール、インドネシア、カンボジアでロケを行い、水墨画のような風景や自然と一体化した人々の暮らしを詩的な映像で映しだす。これらの映像の参考したのが、エドワーズが元ネタの一つに挙げた『バラカ』(93)のようだ。この作品は、コッポラ製作によるドキュメンタリー『コヤニスカッティ』(83)の撮影・脚本・編集を手掛けたロン・フリックが監督したドキュメンタリー。世界各国の人々の暮らしや文化、風習を凝ったカメラワークで捉えた幻想的な作品だ。歴史ある寺院に集う袈裟を纏ったAIなど、本作の荘厳な映像は『バラカ』のSF版といえる。

様々なアジア文化が融合したようなニューアジア(『ザ・クリエイター/創造者』)
様々なアジア文化が融合したようなニューアジア(『ザ・クリエイター/創造者』)[c]2023 20th Century Studios
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