トニー・レオンが東京国際映画祭に登場!ウォン・カーウァイ、ホウ・シャオシェンとの秘話を語る
「『2046』は私にとって特別な作品の一つ」
『2046』は1960年代後半の香港を舞台に、かつて愛した1人の女性の思い出から逃れるように近未来小説を書き始める作家のチャウを描いた物語。トニー・レオンが主演を務めた『花様年華』の続編的な位置付けの作品であり、チャン・ツィイーやコン・リー、チャン・チェン、フェイ・ウォン、そして木村拓哉らアジアのスター俳優たちが勢ぞろいしたことで公開時には大きな話題を集めた作品だ。
「ウォン・カーウァイ監督との作品のなかでも『2046』は私にとって特別な作品の一つです。『花様年華』の続編で、私が演じた人物は『花様年華』の時と同じ人物。ですが監督からは、今回はまったく違う演技で、過去を忘れて新しい世界に向かう姿を見せてほしいと注文がありました。そこで私からも監督にリクエストをしました。『チャンにちょっとだけ髭をください』。
監督は『ダメです』と言いましたが、私のなかでは髭がなければ『花様年華』のチャンではない『2046』のチャンを自分自身で信じることができないと食い下がりました。結局カンヌ国際映画祭でプレミア上映があり、その後のパーティで監督から『あなたの言った通りでした。髭があった方が良かった』と言われました。俳優にとって演技をする時にはどんなに小さなものでもなんらかのきっかけがあることで、役のなかにどんどん入ることができる。私はそう信じております。
一方で、俳優を始めた頃にはなかなか役から離れて現実に戻ることできないこともありました。一つの役をずっと演じていると、次第にどれが本当の自分で、どれが役なのかがわからなくなってしまう。そういう時には日常の暮らしに戻り、暮らしのなかの自分を演じていきながらちょっとずつ取り戻していく。役から離れられなくなるのと同じで、それも一つの習慣みたいなものだと思います」
アジアのスターが次に目指すはヨーロッパ。日本映画への出演は?
『2046』の後、アン・リー監督の『ラスト、コーション』(07)やジョン・ウー監督の「レッドクリフ」など、アジアの巨匠監督と次々タッグを組んできたトニー・レオン。近年では、マーベル・シネマティック・ユニバースの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(21)でハリウッドにも進出。トークの最後で語られたのは、“国際派俳優”としての今後の展望だ。
「いつも私が期待しているのは、色んな国や地域の、異なるチームと作品づくりをしたいということです。これまで香港や中国、台湾でたくさんの映画を撮りましたし、ハリウッドにも出演しましたので、次はヨーロッパです。実は来年、ドイツで映画に出演することが決まっていて、いまはその役づくりのための準備期間中です。もちろんいずれは、日本映画にも出るかもしれませんね」
取材・文/久保田 和馬