マリー・アントワネットにサド侯爵も!ナポレオンと同時代を生きた“フランス革命アベンジャーズ”をピックアップ
復讐者の代名詞として幾度も映画化!“巌窟王”モンテ・クリスト伯
1780年から1815年に実在した靴職人のピエール・ピコーがモデルになったといわれているのが、アレクサンドル・デュマの小説「モンテ・クリスト伯」の主人公エドモン・ダンテス。出世を妬まれたことから偽の密告をされて投獄されたダンテスは、土牢の中で出会った神父から真犯人の正体と一流の紳士となるための学を得て、14年後に脱獄。モンテ・クリスト伯となって華麗な復讐を開始する。
「巌窟王」のタイトルでも知られるこの物語は、1908年に最初に映画化されて以来、100年以上にわたって様々な国々で繰り返し映像化されており、モチーフにした作品も加えればその数は計り知れない。21世紀に入ってからはジム・カヴィーゼル主演で映画化されているほか、日本でもディーン・フジオカ主演でテレビドラマ版が製作された。
ナポレオンの天敵!あの言葉の原点となったマルキ・ド・サド侯爵
精神医学における“サディズム”という言葉の原点となったのが、貴族であり小説家のマルキ・ド・サド侯爵。物乞いの未亡人に暴行を加え娼館で乱行に及ぶなど、虐待と放蕩の末に収監された彼が精神病院や牢獄で過ごした年月は実に32年にも及ぶ。1801年には匿名で出版した作品がナポレオンに見つかり、裁判無しに投獄されたことも。当時は禁書扱いされていたが20世紀以降に評価されることになり、いまでは未完の小説「ソドムの百二十日」は国宝に認定されている。
サドの著作の映画化では、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の『ソドムの市』(75)が最も広く知れ渡っている。ほかにもロジェ・ヴァディム監督や実相寺昭雄監督、ルイス・ブニュエル監督もサドの作品を映画化。また、サド自身が描かれた作品としては、ピーター・ブルック監督の『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』(67)がタイトルの長さも相まって有名だ。
英雄か、悪魔か…皇帝ナポレオン・ボナパルト
そして、革命後のフランスと近代フランス史を語る上で外せない重要人物は、やはりナポレオン・ボナパルトをおいてほかにはいない。イタリア半島の西、コルシカ島出身の軍人から皇帝にまでのぼり詰め、その頭脳とカリスマ性でヨーロッパ大陸を次々と勢力下に置いた。英雄といわれる一方、彼が率いた戦いでの戦死者は300万人を超える。
これまでナポレオンを題材にした映画作品は極めて多く、アベル・ガンス監督の『ナポレオン』(27)をはじめ、キング・ヴィダー監督やセルゲイ・ボンダルチュク監督らが映画化したレフ・トルストイの小説「戦争と平和」もそのひとつ。最も多く映画で描かれた歴史上の偉人としても知られているほど。
リドリー・スコット監督が手掛けた『ナポレオン』では、マリー・アントワネットが斬首刑に処され、国内の混乱が続くなかで皇帝にまでのぼり詰めるナポレオンの、妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係や冷酷非道かつ怪物的カリスマ性が描かれていく。是非とも劇場のスクリーンで、誰もが知る存在の知られざる一面をその目に焼き付けたら、この歴史上最もドラマティックなフランス革命前後の時代に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬