『スマホを落としただけなのに』『護られなかった者たちへ』『怪物の木こり』…「このミス」大賞シリーズの衝撃作の映画化はすごかった!

コラム

『スマホを落としただけなのに』『護られなかった者たちへ』『怪物の木こり』…「このミス」大賞シリーズの衝撃作の映画化はすごかった!

亀梨和也主演、三池崇史監督による超刺激サスペンス『怪物の木こり』(12月1日公開)は、サイコパスである主人公が謎の連続殺人鬼に狙われる、異色のサスペンス映画だ。本作の原作は、倉井眉介の同名長編小説。個性豊かなキャラクターと先読み不可な展開で、第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した傑作長編である。「このミス」は、2002年に創設されたミステリー文学賞。多くのベストセラーを生みだしてきただけでなく、若手作家の登竜門としても定着。それだけでなく受賞作からは多くのヒット映画が誕生している。そこで「このミス」大賞関連作、「このミス」大賞シリーズの中から、実写映画化され、多くの人の脳裏に刻まれた衝撃作の数々をピックアップしてみたい。

医学界で起こる事件に凸凹コンビが挑む『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』

夢の特効薬を巡る医療ミステリー『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』
夢の特効薬を巡る医療ミステリー『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』「チームバチスタ FINAL ケルベロスの肖像 DVD スタンダード・エディション」  DVD発売中  4,180円(税抜価格3,800円)  発売元:関西テレビ放送/フジテレビジョン  販売元:東宝  [c]2014「チーム・バチスタ FINAL ケルベロスの肖像」製作委員会

医師でもある作家、海堂尊のデビュー作「チーム・バチスタの栄光」。東城大学医学部付属病院の心療内科医である田口公平と厚生労働省官僚の白鳥圭輔が犯罪を暴く医療ミステリーで第4回大賞を受賞した。『チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像』(14)は田口と白鳥コンビが活躍するシリーズ最終作「ケルベロスの肖像」の映画化だ。

高性能MRI“リヴァイアサン”を導入した国際Aiセンター(Ai=死亡時画像診断)発足で、田口(伊藤淳史)やAi導入を推進する白鳥(仲村トオル)らは多忙な日々を送っていた。そんななか、厚労省や製薬会社など9人の医薬関係者が一緒に死んでいるのが発見された。白鳥は被害者たちが、疼痛薬ケルトミンの関係者だと気づく。本作は2008〜14年に放映された大ヒットドラマ「チーム・バチスタの栄光」の劇場版。伊藤演じるお人好しな田口と、仲村演じる切れ者、白鳥のコンビが、犯人や事件の裏に隠された真実を暴きだす。監督は「BOSS」や「刑事7人」など多くのヒットドラマを手掛けた星野和成。医療事故や薬害被害といった問題を、ヒューマンに寄せて描いた正統派ミステリー映画だ。

忽然と姿を消した娘の正体に迫る『渇き。』

岡田准一主演作『ヘルドッグス』(22)の原作者でもある深町秋生の本格デビュー作が、第3回大賞を受賞した「果てしなき渇き」。行方不明になった高校生の娘を探す元刑事の父親を描いたベストセラーだ。受賞に際し「友愛や和気を著しく欠いているために、激しい拒否感を抱く方もいるだろう」と作者がコメントしたとおり、目的のために道を外した人々の姿をハードに描いた衝撃作である。

妻の浮気相手を暴行したため失職し、警備員となった元刑事の藤島(役所広司)は、別れた妻から一人娘の加奈子(小松菜奈)が行方不明だと知らされる。加奈子の鞄から薬物を見つけた藤島は、刑事だと身分を偽り娘の交友関係を調査。やがて加奈子の恐るべき一面を知らされる。感情や欲望のままに行動する藤島はまるで獣のような男で、がむしゃらに娘の行方を追う彼が最後につぶやく父としての本音もすさまじい。監督は鬼才、中島哲也。容赦なきバイオレンス描写が少なくないが、多彩なカメラワークや素早いカット割り、幻想的な色彩やアニメーションを挟んだトリッキーな映像が不快さを払拭。役所の怪演や新人らしからぬ小松の存在感に目を奪われるが、妻夫木聡や二階堂ふみ、橋本愛、オダギリジョー、高杉真宙ほか脇を固めた豪華キャスト&クセモノ演技も見どころだ。

現実世界と空想の世界をさまよう『リアル〜完全なる首長竜の日〜』

審査員満場一致で第9回大賞に選ばれたのが乾緑郎の「完全なる首長竜の日」。女性漫画家が自殺未遂で昏睡状態となった弟の脳にアクセスし、自殺の原因を探るSFミステリーである。意識が生みだした空想世界をさまよう浮遊感が味わえる本作を、人物設定を変えて映画化したのが『リアル〜完全なる首長竜の日〜』(13)である。


1年前に自殺を図り昏睡状態に陥ったままの漫画家、淳美(綾瀬はるか)。恋人の浩市(佐藤健)は、彼女を目覚めさせるため “センシング”という医療技術を使って彼女の意識の中に入っていく。センシングを繰り返しているうちに、浩市は幻覚を見るようになるが...。本作で描かれるのは、意識と現実が混在した世界の中で記憶の奥深くに埋もれたトラウマを見つけ、克服するまでの物語。監督は『回路』(01)や『叫(さけび)』(07)など異色スリラーの名手、黒沢清。相手の意識の中で真相をたぐる展開は、犠牲者の脳にアクセスしテロ事件を追う『ミッション:8ミニッツ』(11)を思わせる。謎解きだけでなく、多彩な視覚効果を使って幻想世界に迷い込む浮遊感が味わえるのも本作の魅力である。


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