今年で60年…衝撃の死を様々な角度で描いた映画で知る「ケネディ大統領暗殺事件」の謎と陰謀
タカ派による暗殺計画を描く『ダラスの熱い日』
1973年の『ダラスの熱い日』もまた、“タカ派の政財界の人間によって行われた暗殺事件が、オズワルド単独犯による犯行に仕立てられた”という陰謀論を題材としている。
元CIAの高官を主人公に、政財界の有力者たちがケネディ暗殺を企て、様々なカモフラージュを行う様など事件内部の人間の視点から語られる本作。当時のニュース映像などを用いながら、淡々と事件を描くドキュメンタリータッチな作風となっている。
脚本を手掛けているのは、赤狩りに反対したハリウッド・テンの一人としても有名なダルトン・トランボ。この作品には彼のタカ派への不信感が込められているのかもしれない。
事件に狂わされた人々『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』
『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(13)は、ケネディ暗殺事件によって運命を動かされた人々の激動の4日間を描く実録ドラマ。ジャーナリスト出身のピーター・ランデズマンがメガホンを握っている。
大統領狙撃の決定的瞬間を8ミリフィルムに収めた“ザプルーダー・フィルム”で知られる一般市民エイブラハム・ザプルーダーや護衛を担当したシークレットサービス。別件でオズワルドをマークしていたFBI捜査官にケネディが担ぎ込まれた病院医師、そしてオズワルドの兄ロバートらに焦点が当てられていく。
弟が犯行を起こした挙句、撃たれて命を落としてしまい、さらに家庭も崩壊していくという苦しい時期を過ごすことになるロバート。トラウマによってその後カメラを握れなくなったザプルーダーなど周囲の人々の混乱ぶりから、事件がいかに衝撃的だったかを浮き彫りにしていく。
オズワルド殺害犯の半生を扱う『ジャック・ルビー』
『ジャック・ルビー』(92)は、移送中のオズワルドを射殺したことで知られるジャック・ルビーに焦点を当て、彼の半生をひも解きながら事件の謎に迫っていくという内容だ。
かつて暗黒街で名を馳せていたものの落ちぶれ、いまはダラスでナイトクラブを営むルビーを主人公に、ルビーとマフィアやFBI、ケネディとマフィアとのつながり、さらには事件後の脅迫といった裏側がスリリングに描かれていく。
逮捕後は不可解な言動が目立ち、「殺される」という言葉を残して死を遂げたことでも知られるルビー。彼の生涯を知れる見どころの多い1作だ。
事件後のジャクリーンを題材とした『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』
そして忘れてはいけないのが、24歳で結婚し、34歳で未亡人となったケネディの妻ジャクリーンの存在。“史上最も有名なファーストレディ”と呼ばれた彼女にスポットを当てた1作が『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(16)だ。
愛する夫が目の前で頭を撃ち抜かれるというショッキングな現場に遭遇してから3日。大統領の引き継ぎをし、夫が過去の人になっていくのを目の当たりにした彼女は、彼の功績を後世に残すため、国葬をたった一人で仕切っていく。
悲しみや怒りといった気持ちの整理もままならないなかで覚悟を決め、時には周囲の反対を押しきり、命の危険を顧みずに使命を全うしていくジャッキー。時に強く、時に弱い彼女の心の機微をナタリー・ポートマンが熱演で体現した。
このほかにも、ケネディの死によって副大統領から大統領になったリンドン・ジョンソンの苦悩をウディ・ハレルソン主演で描いた『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(17)など数多くの作品があるので、その死から60年のタイミングを機にチェックしてみてはいかがだろうか?
文/サンクレイオ翼