『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督&石川達也プロデューサーを直撃!「純度の高い1本のヴァンパイア・ストーリーとして再構築しました」

インタビュー

『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督&石川達也プロデューサーを直撃!「純度の高い1本のヴァンパイア・ストーリーとして再構築しました」

「改めて声優陣の演技力のすごさを思い知りました」(尾石)

「純度の高い1本作品として仕上げたい」という、8年間消えずに残っていた思いが今作を制作する原動力になった
「純度の高い1本作品として仕上げたい」という、8年間消えずに残っていた思いが今作を制作する原動力になった[c]西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

――お2人のオススメのシーンを教えてください。

尾石「先ほど劇伴について触れましたが、本作を制作するにあたり、声優陣の皆さんにも再収録をお願いしたので、キャラクターたちの会話シーンではセリフそのものにも意識を向けていただけると幸いです」

石川「オススメはすべてのシーン…といいたいところですが、本作ではより、キスショット(キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード)と暦(阿良々木暦)に焦点を当てる形でストーリーが展開していくので、同シリーズにおける中心人物の“出会いの物語”として、2人のシーンを中心に楽しんでいただきたいですね」

――再収録の際、声優陣にはどのような演出をされたのでしょう?やはり、3部作よりもシリアスな芝居を求められたのでしょうか?

尾石「声優の皆さんには、3部作の収録時にもかなりハードな芝居を要求していまして。たとえば、キスショット役の坂本真綾さんには、序盤のシーンで全身全霊の命乞いをお願いしたのですが、この難しい注文に見事に応えてくれました。まさに完璧なお芝居でしたが、それはその時点の坂本さんが、あらゆる情報を整理し、自分の中で咀嚼したうえで発する“その時しか表現できないお芝居”でもあるので、それをもう一度やってくださいとは言いづらかったですね。でもその結果、当時とはまた違う、まさに本作にぴったりのお芝居をしていただけたので、改めて声優さんの演技力のすごさを思い知りました」

予備知識なしでも十分楽めるのが今作の特徴
予備知識なしでも十分楽めるのが今作の特徴[c]西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

――同じシーンでも、今作と3部作では前後のシーンとの繋がりが違っていたりするので、それに合わせてお芝居にも微妙な差異が生じるわけですね。そうした変化の付け方は、声優さんが独自に判断されているのでしょうか?

石川「そうなります。むしろ今回は、演出側から『こういうお芝居をしてください』というディレクションはいっさいなかったですね」

尾石「本作の声優陣は実力派ぞろい…ということもあり、そういった形でお願いしました。とくに暦役の神谷浩史さんとは20年来の付き合いなので、『神谷さんに演じてもらえば大丈夫』という安心感がありました」

――そんな神谷さんのお芝居のなかで、いちばん痺れた箇所…といいますか、すごいなと思われたシーンはどちらですか?

尾石「どのシーンも非常に魅力的に演じていただきましたが、いちばん印象に残っているのは、やはりラストシーンですね。詳細は伏せますが、息遣いだけで暦の感情を見事に表現してくださって、すごく印象に残りました」

2人の「物語」シリーズのお気に入りキャラクターは誰!?
2人の「物語」シリーズのお気に入りキャラクターは誰!?撮影/河内彩


――貴重なお話、ありがとうございます。それでは最後の質問になりますが、<物語>シリーズ全編を通して、お2人のお気に入りのキャラクターを教えてください。

尾石「テレビアニメ『化物語』の制作時は、メインヒロインの一人、戦場ヶ原ひたぎに思い入れがありました。そのせいか、羽川(羽川翼)はおざなりな扱いになってしまって…。それを後悔していたので、『傷物語』3部作では羽川を魅力的に描こうと思ったのですが、そうすると今度は彼女の占めるウェイトが大きくなり、キスショットが不憫なことになってしまって…(苦笑)。こうした反省を踏まえて、この度の『傷物語 -こよみヴァンプ-』では暦とキスショットにフォーカスした構成になっていますので、そういった部分にも注目していただけると幸いです」

石川「僕は昔から羽川推しです(笑)。『傷物語』に限らず、シリーズを通して特異な立ち位置にいるキャラクターなので、次はどんな行動を取るのか、毎回ワクワクしながら、その動向を見守らせてもらっています。それともう1人、お気に入りのキャラクターを挙げるとしたら暦は外せないですね。なんだかんだあっても、やっぱりかっこいいキャラなので、これからもその活躍を見ていきたいです」

取材・文/ソムタム田井

関連作品