衝突する想いはつながることができるのか?冒険が戦いへと突き進む「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」第5&6話をレビュー
正しい行いをしてもそれを批判する声があることに疲弊してしまったアクタ
こうした人物の掘り下げは、第6話でアクタに対しても行われる。スペースから辛くも逃れ、アクタが暮らす猿島にやってきたナギたちに、アクタはこう語る。「どんなに正しくても、それを否定する者が存在するのがこの世界。だから自分は、理解し合えるわずかな人々を守る」と―。これは映画やドラマに限らず、昨今ヒットしている漫画や小説等々の一つの特徴でもあるが、画一的な正義は存在せず、したとしても全員を救うことは叶わず、敵味方の区分けは信念の違いによるもの、という“定理”が、「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」でも描かれる。
ウーパナンタの勇者だったアクタは「数多の人を救う」難しさに疲弊し、己の手の届く範囲の人々を守る生き方を選択した。そしてスペースは、(個人的な怨恨に支配されていても、本人の想いとしては)己の身に起きた悲劇を繰り返さないために創造主を葬ろうと考える。しかしナギからすれば、たった一人の母の命が危険にさらされている状況を回避したい。全員の気持ちがわかってしまうタイムは、なにを優先するべきか苦悶する…。
タイムの純粋な想いが二つの世界を救うカギに?
いま述べたように、各々の想いは平行線だ。そのなかでドラゴンの声も聞こえない“落ちこぼれ”のドラゴン乗り、タイムの心理と行動こそが、事態を変化させるカギとなっていくのが本作の芯となるテーマといえるだろう。第5&6話では「ハナを葬る」計画に加担してしまったタイムが激しく後悔し、スペースの前に立ちはだかる姿が描かれる。ただ彼の決意に対して実力はまるで伴っておらず、手練れのスペースに一蹴されてしまう…。「方法はわからないけど全部救いたい」と叫ぶタイムは未熟で、実のない理想論を振りかざす青二才に映るかもしれない。ただ、諦めないことで活路が開ける可能性もあるはずで、タイムの悲痛な想いが残り2話のカギになっていく“伏線”とも考えられる。
第6話のラストはナギの“覚醒”へとつながるのか?
その裏付けといえるのが、前述した「ナギに眠る“なにか”の胎動」。フラッシュバックする母との思い出の中で、ナギには特別な力があるのでは?というヒントが示唆されていた。そしてハナの「想像力は世界の扉を開く」という言葉と、スペースがつぶやく「創造主の力が娘に受け継がれている可能性がある」。そして、第6話のラストに起こるショッキングな展開。スペースの放った槍から母を救うため、身を挺した結果槍に身体を貫かれ、吐血するナギ。
一見すれば「主人公の一人であるナギが死んでしまうのか!?」と絶望してしまうが、これまでの“匂わせ”を踏まえるとこれは「覚醒回」の布石と見るべきだろう。絶体絶命のピンチに放り込まれたり、死の危機に瀕することで内なる力が引きだされてパワーアップしたりするのはファンタジーやアドベンチャー、バトル作品の“華”であり、その条件は整ったと考えられる。もちろん、どういうルートを通ってそこに行きつくかはパッと思いつくだけでも数パターンあり、こうした考察や妄想を楽しみながら、クライマックスへと向かう第7話の配信を待ちたい。
文/SYO