「涙なしには見られない!」ARMYライターがBTSの10年の軌跡をたどる「BTS Monuments: Beyond The Star」を徹底レビュー
BTSの“理想”がK-POPの新しい道筋に
5話のラストで「新しい章の準備をしないと」と話していたJ-HOPEが、BTSの集大成となる新アルバム「Proof」の準備をしているシーンからスタートする6話「再始動」。新曲「Yet To Come」は、「私たちの最高の瞬間はこれから」とBTSとARMYの物語がこれからも続いていく、そして最高の瞬間はまだ来ていないという想いが込められた楽曲だ。7人のレコーディングのシーンでは、ラップライン(RM、SUGA、J-HOPE)が楽しそうに「Run BTS」を収録している。
2022年には、ソウルで“声出し禁止”のオフライン公演を開催。本国公演ということもあり、リラックスした状態でサウンドチェックを行う7人。「久しぶりに友達と会った気分」とJIMINは嬉しそうに目を細めた。Vは、「人々の期待の中で生きるのは怖い。ただ、ずっとARMYを見ていたいと思うから長く愛を与えられるアーティストでいたい」と話し、JINは「一度頂点を経験したから、今後はそれぞれが好きなことをして生きていくのも悪くない」と笑顔で語る。そしてBTSは、グループ活動だけではなく、ここからそれぞれの道を切り開いていくこととなる。
7話「紫のままで」。2022年、BTSはラスベガスで単独コンサートを開催。この時期はラスベガスの街全体がBTSとコラボを実施していたのだが、ベラージオの噴水ショーでBTSの楽曲が流れることに喜ぶJ-HOPE、V、JUNG KOOKが微笑ましい。ラスベガスでのライブ終了直後、メンバーたちが楽屋に戻っても鳴り止まない歓声を聞いて、「もう歓声が恋しくなりそう」と嬉しそうに語るJ-HOPEも印象的だった。
7話後半では、一人暮らしをしているメンバーそれぞれがどんなふうに家で過ごしているのかがわかる、ARMY必見の映像が流れる。JIMINは自宅にJUNG KOOKを招き、2人で一緒にチキンやおでんを食べたり、料理をしたりと、仲良しコンビで休日を過ごしている。Vは自宅でゲームをしたり、かけるレコードを選んだり。「僕の好みを詰め込んだ部屋」というセンス抜群のインテリアの数々は、彼自身が選んだものだそうだ。RMの自宅には、たくさんの素晴らしいアート作品が並ぶ。RMはなんと自宅の冷蔵庫の中身まで見せてくれていた。「『ON』で一区切りついたらどうなっていたのだろう」と考えることがあると話すRM。SUGAは、「パンデミックがなければ、2020年11月から2年半ほど活動休止する予定だった」と激白している。
「この先どうなるかわからないけど、BTSはこれからも存在するだろう」というJ-HOPEの力強い一言から始まる最終話「明日への約束」。2022年10月に釜山で開催された一夜限りのコンサート「Yet To Come in BUSAN」。SUGAはこの公演で「『BTSは健在だ!』というところを見せたかった」と振り返る。
最終話では、 BTSとして輝いている7人というよりも、JINが友人たちとキャンプに行く様子や、SUGAが釣りを楽しむ姿、J-HOPEの一人旅の様子など“個人”として人生を楽しんでいる7人が映し出されていく。JINはBTSのメンバーについて「絶対に一緒にいなきゃダメというわけじゃない。みんなそれぞれやりたいことや夢がある。それを応援しながら、グループとしての活動も心に留めていけたらいい。それが幸せに近いんじゃないかなと思う」と語っていた。RMも、「30代も理想的なアイドルの姿を見せたい。グループを維持しながらソロ活動も行なって、K-POPグループのネクストチャプターをかっこよく示したい」と明かす。BTSとしても個人としても、やりたいことをやっていきたいという彼らの“理想”は、これからのK-POPの新しい道筋となるのではないだろうか。
JINの入隊、そしてそれぞれのソロ活動が本格的に始動した2022年。JINが入隊のために坊主にする様子を、真剣に見守るSUGAとJUNG KOOKのシーンも印象的だった。
2024年現在、BTSは全員が兵役へ行っており、“完全体”として再始動するのは2025年と言われている。JIMINがARMYに向けて制作したファンソング「Letter」に合わせて流れる感動的なシーンの数々は涙なしでは見られない。しかし最終話、最後のVの口から語られた言葉が、BTSの全てであり、本質だと思う。その言葉をぜひ本編で確かめてほしい。
文/紺野真利子