監督×カメラマン×カラリストが語り尽くす!『ゴジラ-1.0/C』の“モノクロ”に凝縮されたこだわりを徹底解剖
――撮影された柴崎さんから観て、モノクロ化のポイントはどんな点になるのでしょうか?
柴崎「現場の人間としては、カラーと白黒のライティングは別ものだと思ってます。最近のカラーのライティングは、ライトを意識させないナチュラルが多数派じゃないですか。『天国の日々』とか『レヴェナント: 蘇えりし者』はライトの存在を感じさせない自然光ばかり。そういうカラーのライティングをそのまま白黒にするのは難しいと思うんです。たとえば『レヴェナント』みたいに森が舞台だと、白黒にしたら顔と背景が同化しちゃうんじゃないかって。『ゴジラ-1.0』はカラーとしてライティングしているので、そのままフラットに色を抜いただけだと、メリハリというか力がないんですね。そこをグレーディングで質感も含めてかなり作っていってもらいました」
石山「カラーの映像を単純に彩度だけでコントロールして色を抜いてくのでは立体感が出せないため、彩度を抜きつつRGB(赤、緑、青の3原色による色の表現法)のチャンネルを分離させ、人の肌(R)以外の輝度を落としてコントラストをつけていったんです。さらに人の肌だけマット作成し、質感と濃淡を出す作業を細かくしていきました」
柴崎「そうすることで肌の艶感が出るんですね。よく色が引っ張り上げられてるなと思います」
石山「引っ張り上げることで空気感が加わるというか、人物との距離感がぐっと近くなる感じがするんですよね。海に関しては青の輝度を落として、海を黒くしています。弊社のオリジナルのプラグインなどを混ぜて作ったカーブデータを当てたんですが、そのままでは人の顔より白い服が目立つこともあり人物に目が行きにくいため、服を部分的に落として顔を上げる作業をカットごとにやっていった感じです」
「『ゴジラ-1.0』は、海や空が濃いグレーに落ちたほうがいい」(柴崎)
柴崎「最初に『シン・ゴジラ:オルソ』を見せてもらったんですが、これは赤に感光しないフィルム(オルソクロマチックフィルム)を参考にした計算式だと思うので赤が濃いグレーになっていると思います。でも『ゴジラ-1.0』は海や空が明るいグレーではなく、濃いグレーに落ちたほうがいいんですね。オルソとは違う計算式を考えてもらわないとな、と思っていたら石山さんはそれをわかっていて、すでに違う計算式を考えていたという(笑)」
石山「簡単に言うとオルソはRの輝度を落とすんですが、自分らはRの輝度はちょっと上げて、GとBの輝度を落としています。要は人肌以外が落ちるんです。カットのスタートポイントで役者に目が行くように考えて、でも肌が明るくなりすぎたところはコントラストを付けながら輝度を落とし、質感を出していくという方法を取りました」
柴崎「ベースの計算式のままでもかなりよかったと思いますが、そこからさらにシーンごと、カットごとに調整していくという。さらに石山さんは目だけマスクをかけて調整したりもしてましたね」
石山「目はすごく大事なんです。顔のマスクを切るとか顔の半分だけマスク切るとか、トラッキングやマット作成の作業は僕1人では到底できないので、社内で分業にして画づくりをしていきました」
山崎「カットの中でもまた顔だけで、さらに動いてますから。1秒に24枚全フレームに対してマスクを作っていくという、機械を使うにしても気の遠くなる作業ですね」