「イノサン」「#DRCL」の坂本眞一が『デューン』の世界を表現!「アイデアの宝庫。『デューン』のデザインはすごく刺激になります」
「ヴィルヌーヴ監督の作品は、どこを切り取っても美術館に並べられる絵画のように美しい」
映画ファンでもある坂本は、創作面でも様々な映画からインスピレーションを受けているという。「監督の考え方やアイデアなどからインスピレーションを受けることもあります。特に、僕の漫画はほかの人がやらない実験的な表現をよくしているのですが、そういった表現は漫画よりも映画でよく目にするんです。映画を観て『自分たちは孤独じゃないんだ、間違いじゃないんだ』と気づかされることはよくあります」と話す。「『ボーはおそれている』なんてすごく実験的で、ほかでは類を見ない構成で作られていました。勇気をもらいましたし、改めていろんな映画を観ないといけないなと思いました」。
坂本作品の特徴である緻密な描き込みや、流れるようなコマ割りにも映画の影響があるという。「漫画はおもにセリフとト書き、擬音、集中線でテンポを取るので、いかに記号的に流れを見せるかがポイントです。でも、自分の作品はどうしても丁寧な流れを作らないと難しいんです。たとえばドアを開けるのも、滑らかな動きをコマを重ねて表現しています。そのテンポや見せ方は映画から学びました」とし、映画の構図に憧れを持っていると語る。
「漫画はコマを割っていくスタイルや、限られた時間内で行う共同作業ということもあり、絵画的にまとまった1枚絵を生み出すのが難しいんです。でも、ヴィルヌーヴ監督の映画は、どこを切り取っても美術館に並べられる絵画のように美しい。そんな構図を観ていると、幸せな気持ちになれますね」。
「創作意欲を掻き立てられるような、挑戦的な映画が大好きです」
多忙を極める坂本だが、可能な限り映画は映画館で観るようにしているそうだ。「作業中、デスクのモニターに映画を映すこともありますが、どうしても中断させられます。映画館に行き、しっかり拘束されたなかで観るという時間はすごく大事だと思います。サブスクで映画が手軽に観られるようになりましたが、大好きなホラー映画は家族と一緒に観られないので、やはり映画館ですね(笑)。ベスト映画はジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』が一番に来ちゃうくらい、好きなジャンルはやっぱりホラーやサスペンスです。でも漫画家としては自分が見たいものだけでなく、世の中の人達がおもしろいと言っているような映画も観に行くようにしています。両方見ることが大事かなと思いますし、自分と世間が思う『おもしろい』にずれが生じていないかという確認も込めて」という坂本に、最近の印象に残っている作品を聞いてみた。
「先ほどの『ボーはおそれている』はよかったですね。映画や漫画作りは作品に真摯に向き合うのが大前提ですが、そのうえで楽しみながら肩肘張らずに大騒ぎしてもいいんだ、という遊び心をもらえ、創作意欲を掻き立てられました。ほかにも、『ゴジラ−1.0』もすごくおもしろかったです」。
そんな坂本は、『デューン 砂の惑星PART2』もぜひスクリーンで楽しんでほしい作品だという。「壮大なドラマが味わえますし、ポールが少年から救世主へと成長を遂げる過程も楽しんでもらえるでしょう。シャラメくんの俳優としての新たな一面に惹かれると思いますし、なによりスケールの大きさはまさに映画館向きです。公開されたら、もう一度観ようと思っています」。
取材・文/神武団四郎