『青春18×2 君へと続く道』『言えない秘密』心に響く青春ラブストーリーが示す日本×台湾の爽やかな親和性
台湾人監督の自伝的小説を日本でリメイク!…『あの頃、君を追いかけた』
同じく舞台を台湾から日本に移してつむぐ『あの頃、君を追いかけた』(18)は、2011年製作の同名台湾映画のリメイク作品。小説家の水島浩介(山田裕貴)は、10年前に卒業した高校時代を懐かしく振り返る。バカばっかりしていた仲間たちとの友情や、いつだって側にいてくれた君との日々など、誰しもの心に息づく懐かしくも愛おしい“あの頃”を描きだした。
もともとの物語の元ネタは、台湾版『あの頃、君を追いかけた』を監督したギデンズ・コーの自伝的小説。コー監督はこの台湾版の撮影時には市川拓司のベストセラー小説を映画化した『いま、会いにゆきます』(04)を参考にしていたという。そして日本の漫画やドラマからクリエイターとして多いに刺激を受けたと語り、台湾へのジャパニーズカルチャーの深い影響について指摘しているが、そういえば『青春18×2 君へと続く道』のジミーが日本語を覚えるきっかけとなったのも「スラム・ダンク」のコミックだった。
大ヒット台湾映画『一秒先の彼女』を男女逆転!…『一秒先の彼』
最後は山下敦弘監督と宮藤官九郎がタッグを組んだ『一秒先の彼』(23)。第57回金馬奨で作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞の最多5部門で受賞した大ヒット台湾映画『一秒先の彼女』を原作に、メインキャラクターの設定を男女逆転させて描いた新発想の日本リメイク作品だ。
何をするにも人よりワンテンポ早いハジメ(岡田将生)と人よりワンテンポ遅いレイカ(清原果耶)。ハジメは意中の彼女との初デートを楽しみにしていたが、目覚めるとなぜか約束の日の翌日に。どうやらレイカが謎の鍵を握っていて…。物語では、この失われた1日をハジメとレイカそれぞれの視点で描いていく。紆余曲折の果ての2人の時間が重なる奇跡の瞬間に、胸が熱くなるとびきりキュートな“タイムラグ(時差)”ラブストーリーだ。
もともと『一秒先の彼女』のファンだった山下監督は、企画の面白さを十分に感じつつも現状の日本によりマッチするための工夫として、台湾版の主人公の性別を入れ替えることを決断。そして『天然コケッコー』(07)以来の山下組となる岡田を主人公に据え、オリジナルから多少の逸脱はありつつも、ラストでは同じ空気感をまとうような作品作りを目指したのだという。
また、そんなせっかちなハジメと対照的に、もう一人の主人公の口ベタだが沢山の思いを抱えているレイカを『青春18×2 君へと続く道』のヒロインである清原が好演。地に足が着いた確かな演技でファンタジックな設定にリアリティを与え、愛すべきキャラクターを創造することに成功している。
ここで紹介した青春ラブストーリー以外にも、芥川賞作家である小川洋子の小説を映画化した永瀬正敏主演作『ホテルアイリス』(21)や田中麗奈と台湾出身俳優ワン・ポーチエがダブル主演する『おもてなし』(18)、日本人男性と台湾人女性の国際結婚にまつわるエピソードをまとめた書籍を原作とする『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(17)などの日台合作映画も近年に公開。そして今後は前述の『言えない秘密』のほか、門脇麦が出演するホウ・シャオシェンプロデュース作『オールド・フォックス 11歳の選択』(6月14日公開)も待機中だ。
今後もますます増えること必至の日本×台湾コラボレーション作品。まずは『青春18×2 君へと続く道』を観て、2つの国の素敵なマリアージュを堪能してほしい。
文/足立美由紀