『レイジング・ブル』、『サウスポー』から『アイアンクロー』につながる系譜!真に迫るスターたちの肉体改造に迫る
ヒラリー・スワンク、エマ・ストーンの肉体改造も光る!
ほかにも伝記映画『シンデレラマン』(05)のラッセル・クロウ、「ロッキー」のスピンオフ「クリード」シリーズのマイケル・B・ジョーダンなど多くのスターが肉体改造でファイターを体現したが、これらの役作りは男性の専売特許ではない。クリント・イーストウッド監督、ポール・ハギス脚本の『ミリオンダラー・ベイビー』(04)は、女性ボクサーの悲劇を描いた骨太ヒューマンドラマ。オスカー女優ヒラリー・スワンクが主人公のプロボクサー、マギー・フィッツジェラルドを演じている。
かつて競泳選手だったスワンクは、撮影に向け3か月にわたってボクシングとウェイトリフティングを行い、タンパク質を中心にした食事コントロールで体を作り体重を約9kg増量。ダイナミックなファイトシーンや終盤の感情表現が評価され、主演女優賞で2度目のオスカーを手にした。
格闘技以外でも、エマ・ストーンが伝記映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(17)でテニス選手ビリー・ジーン・キングを演じるため、体重を約7kg増やして撮影に臨んでいる。肉体を誇示する役ではなかったが、たくましいストーンが見られる貴重な作品といえる。
“思わず二度見”レベルの肉体を獲得したザック・エフロン
そんな肉体改造スター映画の最新作が『アイアンクロー』である。どんなに体を鍛えたとしても元の姿からかけ離れてしまうことはまずないが、そういう意味で“思わず二度見”レベルに変貌した本作のエフロンはレアケースといえる。
偉大な父の跡を継ぎプロレスラーになった兄弟の悲劇を描く本作で、エフロンが演じたのは年長者として3人の弟たちをまとめるケビン・フォン・エリック。父の望むレスラーになろうと努力する息子を演じるため、食事とトレーニングで筋肉ムキムキの分厚いボディに大変身を遂げた。
撮影に向けプロレス技もみっちり学んだエフロンは、見た目だけでなくドロップキックなど大技を繰り出す試合シーンでも盛り上げる。いまやCGでなんでも表現できる時代になったが、『アイアンクロー』はルックス、アクション共にプラクティカルな表現の魅力に満ちあふれた1本。存在感抜群で躍動するリアルな肉体をスクリーンで味わってほしい。
文/神武団四郎