画家・ヒグチユウコが描く不穏で美しい『オーメン:ザ・ファースト』の世界…「自分の中にある善と悪について思いを巡らせながら観てほしい」
「聖域の中にある人間の涙と、神と悪魔の対峙を表現しています」
今回描き下ろしてくれたイラストレーションにちりばめた要素については、「『オーメン』のポスターと雰囲気も似ている『オーメン:ザ・ファースト』のティザーポスターと被せる形でイラストを作っていきました。よく見ると、ティザーにも描かれている柵もイラストの中に入っているんです。『オーメン』に登場した十字架のイメージと、悪魔の数字である“666”も入れてあります」と、本作のポスターからイメージを膨らませていったことを明かした。
また、劇中登場する“あるシーン”をイラストに活かしたという。「聖母の絵の前で佇むマーガレットの姿を捉えた場面です。奥に聖母の絵があって、手前に悪魔の顔にも見えるロウソクと電飾があり、その狭間に(悪魔の子の誕生を阻止しようと奔走する)マーガレットがいる。聖なる場所に立っていながらも(神と悪魔の間にいる)という雰囲気を表現しました」とヒロインの姿が印象的だったと語った。
「また、イラストでは電飾ではなく人間の目を描きました。悪魔の子を宿したくなかった“ダミアンの母親の涙”というイメージも込めています。だから、“666”のアザがある中央の口も叫んでいます。ビジュアル的には美しくもあるのですが、悲しい雰囲気を出しました。本作ではあの叫びのシーンが一番悲しかったですね…。このイラストでは聖域の中にある人間の涙と、神と悪魔の対峙を表現しています」。
「教会という聖域の中に善も悪もある」
続けて「『オーメン』シリーズは(登場人物たちが)葛藤しながら、どっち側に属するかという話だと思っています。(教会にいる人たちは)みんな人生を捧げて神側に属していたはずなのに、悪魔側のささやきに心が負けてしまって…という。『オーメン』に登場するダミアンの父親もそうです。悪魔の存在に気付いて、かわいい息子を倒さなければならないと葛藤しますし、心身を試されていく。なので、人の心の中のメタファーとして、善のほうに転ぶのか、悪のほうに転ぶのかというギリギリのせめぎ合いが描かれる。きっと、教会という聖域の中に善も悪もあるのだと思います」と「オーメン」シリーズに関する自身の解釈も語ってくれた。
最後に、これから『オーメン:ザ・ファースト』を見る人に向けたコメントも。「悪魔という存在がどういったものなのかということを考えていただきつつ、自分の中にある善と悪についても思いを巡らせながら鑑賞いただくと、おもしろさが増すのではないかなと思います。あと、美術まわりの美しさとマーガレットをはじめ神父、シスターを演じている役者たちの演技もみんなすごかったので、ぜひ楽しんでほしいです!」
取材・文/編集部