”あの頃”の恋心を思い出す『青春18×2 君へと続く道』『花束みたいな恋をした』『君の膵臓をたべたい』…大人も余韻に浸れる恋愛映画9選
「恋愛映画」というと、若い世代に向けたキラキラとまぶしい恋物語を思い浮かべるかもしれないが、昨今、酸いも甘いも噛み分けた大人にこそより味わってほしいラブストーリーが増えている。5月3日(金・祝)より公開する、日本と台湾の実力派俳優が共演する『青春18×2 君へと続く道』もその一つ。ひと足先に公開された台湾の舞台挨拶で、主演のシュー・グァンハンが「一見、青春ラブストーリーに見えますけど、実は“大人”の魂が宿っている作品です。大人の皆さんにこの作品で青春を思い出してもらえたら」とアピールしたように、若者だけではなく、大人もその余韻に浸れる作品だ。今回は、いま観ておきたい「大人もじっくり味わえる恋愛映画の名作」9選を紹介したい。
時と場所を超えて紡がれるラブストーリー『青春18×2 君へと続く道』
『青春18×2 君へと続く道』は、社会派作品のほか、『余命10年』(22)をヒットさせて恋愛物語でも腕前を見せた藤井道人監督による初の国際プロジェクトだ。台湾で話題を呼んだ紀行エッセイを映画化した日台合作ラブストーリー。『ひとつの太陽』(19)や台湾で大ヒットを記録した『僕と幽霊が家族になった件』(23)の国際派スターのグァンハンと、藤井組の常連で、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)、NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」の実力派女優、清原果耶がW主演を務める。
36歳のゲームクリエイターのジミー(グァンハン)が、18年前に出会い、理由もわからぬまま別れることになった日本からやってきたバックパッカーのアミ(清原)との忘れられない初恋を回想しながら、日本に渡り、彼女の故郷である福島を目指して旅するロードムービー。18年前の台湾パートでは、初々しい2人の幸せな様子がうかがえる。4歳年上のアミにジミーは自分が夢中になっている日本の人気漫画「スラムダンク」をきっかけに、お互いに日本語と中国語を教え合う。打ち解け合った2人は、バイクの二人乗りや映画館デートなどを重ねていく。大人になった現代の日本パートでは、ジミーは日本各地を訪れながら福島へ向かう。「スラムダンク」の聖地である湘南の海、信州の趣きある商店街、新潟の美しい雪国。ジミーはアミとの思い出に重ねて日本の風景や人々との出会いを味わう。日台合作の本作は、まるで日本と台湾を旅している気分になれるだろう。
何気ない日常を美しく切り取る『余命10年』
小松菜奈と坂口健太郎の共演で大ヒットとなった『余命10年』(22)。不治の病で余命宣告された主人公、茉莉(小松)と、人生に行き詰り自ら命を絶とうとしていた青年、和人(坂口)が出会い、恋が始まる。「生きること」に対して臆病だった2人。特に茉莉は自分が病の身であることから、恋愛のパートナーを持つことを諦めていた。しかし、和人と交流していくうちに少しずつ前向きな心を取り戻していく。シリアスな題材を扱っているが、ありふれた日常の風景がかけがえのない瞬間なのだと改めて気づかせてくれる作品だ。
等身大カップルの5年間を映し出す『花束みたいな恋をした』
観客に共感の嵐を巻き起こした『花束みたいな恋をした』(21)は、ある平凡な20代のカップルの5年間の関係性の変化を描く。脚本は数々のヒットドラマを手がけてきた坂元裕二が担当。2015年から2020年の間に起こった、「渋谷パルコの閉店」や「“スマスマ”の最終回」などの実際の出来事や、当時流行したゲームや漫画などのサブカルネタを盛り込み、“あの時”を色濃く感じさせるラブストーリーを展開。菅田将暉と有村架純が演じる等身大の主人公2人が、就活や同棲などの人生の局面で喜びつまずく姿に、心を重ねずにはいられない。
秘密を抱えた少女と「僕」の物語『君の膵臓をたべたい』
ショッキングなタイトルとは裏腹に、高校生の淡くせつない恋物語を丁寧に映し出した感動作『君の膵臓をたべたい』(12)。現在は若手きってのトップ俳優となった、浜辺美波と北村匠海の出世作だ。重い膵臓の病を患いながらも周りにはそのことを隠して気丈に振舞う桜良(浜辺)と、ふとした偶然から彼女の病を知ってしまうクラスメイトの「僕」(北村)。おとなしい性格の「僕」は、桜良の明るさや強さに触れ、恋心と憧れがない交ぜになった、初めての感情を知る。12年後、教師となった「僕」が、思い出の図書室で桜良が隠したあるモノを探す場面は、落涙必至の本作のハイライトとなっている。