2.3トンの巨大シャンデリア、ファントムメイクに4時間半…『オペラ座の怪人』のすごさを数字で振り返る!
ジェラルド・バトラーが主演を務めたミュージカル映画『オペラ座の怪人』(04)が、公開から20周年のアニバーサリーイヤーに『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』として6月14日(金)より全国公開される。そこで本稿では、撮影のために用意された300着以上の手縫いの衣装、40週間かけて設営された映画のセット、4日間かけて設置されたシャンデリアなど、圧倒的なこだわりと熱量で表現された『オペラ座の怪人』の世界を数字からひも解いていく。
刺激と絢爛、情熱の時代であった19世紀パリのオペラ座では仮面をつけた謎の怪人ファントムの仕業とされる奇怪な事件が続いていた。若く美しいオペラ歌手クリスティーヌ(エミー・ロッサム)に才能を見出したファントムは、彼女に音楽の手ほどきをし、クリスティーヌはファントムを“音楽の天使”と信じてプリマドンナへと成長する。彼女は幼馴染の青年貴族ラウル(パトリック・ウィルソン)に愛されながらも、孤独な魂と情熱を持ったファントムに心を惹かれていくが、ある日ファントムの仮面の下に隠された秘密を知ってしまう。一方、怪事件が続くオペラ座では、ファントムを捕まえようとラウルたちが立ち上がる。
世界各国で1億6000万人が観劇
1986年ロンドンでの初演以来、世界各国で上演されているこのミュージカルは、これまでに1億6000万人が観劇、日本でも1988年から日本各地でロングラン公演され、2024年5月現在でも劇団四季で上演されているなど、その人気が衰えることはない。
全世界の興行収入の40%以上は、日本が稼ぎ出している
映画版『オペラ座の怪人』の日本公開は2005年1月29日(全米は2004年)。最初は274館でスタートしたがその後GWまで超ロングランが続き、2012年公開の『レ・ミゼラブル』に抜かれるまで、ミュージカル映画の最高記録をマークしていた。しかも、全世界の興行収入の40%以上を日本が稼ぎ出すという驚愕の結果に。各地で「オペラ座の怪人」ブームを巻き起こした。
ファントムのメイクは4時間半超
物語の鍵を握る、素顔を隠すためのファントムの仮面。ファントムの魅力、怒り、もろさをテーマに、4時間半以上もかけた特殊メイクが施されている。なおこの仮面は、ヘアメイクアーティストのジェニー・シャーコアと衣装デザイナーのアレキサンドラ・バーンが協力し、上質な革を使って作り上げた。
組立に4か月!2万個のスワロフスキーを使用した巨大なシャンデリア
この物語の“主役”とも言うべきシャンデリアは、高さ約5m、幅4m。2万個にものぼるフルカットのクリスタルから成っている。シャンデリア・メーカーの大手であるパリのティースランが製造し、組み立てに4か月、スタジオでの組み付けに丸4日を要したという巨大なもの。スワロフスキーは、そのデザインコンセプトと組み立てに関し、映画のセット・デザイナーであるアンソニー・プラットに全面的に協力。重量2.3トン、当時130万ドル(約1億5000万円相当)の巨大シャンデリアができあがった。
40週間をかけて、映画セットを構築
『オペラ座の怪人』のセットはすべて、パインウッド・スタジオの8つのステージに作られた。プラットの意欲的なデザインを形作るのには40週間かかり、73トンのスチール、15000リットルのペンキ、150キロの材木、82キロの足場が用意された
14人の彫刻家が再現したオペラ座の彫像たち
プラットは劇中の、オペラ座の屋根のセットを「美しくロマンチックだが、やはり不気味にしたい」と考えていた。これは、実際のパリのオペラ座の上に立っている彫像と、1870年代というロダンの時代にインスピレーションを受けたもの。屋根の上、観客席、広間の彫像を作るため、そしてラウルとファントムのドラマチックな対決の場所となる墓地のシーンのため、プラットは14人の彫刻家を雇った。
プラットは「ああいうふうに華やかで非実用的な彫刻を施せる才能ある人たちを見つけられて、とても運がよかったです。彫刻家たちの腕がよくなかったら、3種類のセット(オペラ座の会場内、屋根、墓場)を作ることはできなかったでしょう」と振り返っている。
300着以上を手縫い、2000着以上を集めた衣装
1870年代パリの壮麗な世界を再現するため、ジョエル・シュマッカー監督は、『エリザベス』(98)や『ハムレット』(96)でアカデミー賞にノミネートされている映画、舞台の衣装デザイナー、アレクサンドラ・バーンに『オペラ座の怪人』の膨大な衣装デザインを依頼。パインウッド・スタジオに作られたスタジオからバーンと彼女のチームは、本作のために300着の手縫いの衣装を送りだし、さらに、ヨーロッパ中の衣装室から手広く集めた2000着に修正を施している。
「オペラ座の怪人」が大好きな人はもちろん、映画館で観たことがない人も、この機会に絢爛の映像と極上の音楽による一大スペクタクルを映画館で楽しんでいただきたい。
文/山崎伸子