シタデル、ウォー・ボーイズ、緑の地…『マッドマックス:フュリオサ』ともつながる『怒りのデス・ロード』の世界をキーワードでおさらい!
荒廃したポストアポカリプス世界を生きる孤高の男の活躍を描いたジョージ・ミラー監督による「マッドマックス」シリーズ。その9年ぶりの最新作となる『マッドマックス:フュリオサ』が5月31日より公開中だ。
タイトルからもわかる通り、今作はマックスではなくフュリオサを主人公としたスピンオフ。それにもかかわらず話題を集めているのは、カルト的人気を誇った前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)の存在が大きいだろう。
荒野を放浪するマックス(トム・ハーディ)が、独裁者イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)に反旗を翻そうとするフュリオサ(シャーリーズ・セロン)やジョーの妻たちと共闘する『怒りのデス・ロード』は、バイカー集団に誘拐された若きフュリオサを扱う新作と直接的につながっているため、復習はマスト。その世界観について、キーワードと共におさらいしていきたい。
権力構造を象徴する自然の砦“シタデル”
緑も水もほとんどない不毛の荒野を舞台とした本作において重要な場所となるのが、岩が大きく隆起した砦“シタデル”だ。本作のヴィランである独裁者イモータン・ジョーが支配する天然の要塞シタデルは、帯水層の真上に位置しており、地下深くから水を汲むことができる唯一の水源。水を支配しているからこそ蛮行がまかり通るジョーの命綱だ。
垂直にそびえ立つ砦の上層部にはジョーと5人の妻が暮らし、穀物を育てる緑豊かな温室も。一方、下層部にはウォーボーイズに血を提供する輸血袋とされた捕虜を吊しておく場所や車両工場、さらに労働者が巨大な踏み車を回し続けながら稼働させる給水ポンプを完備。さらにシタデルの外には病に侵された人たちが群れをなし、たまに与えられる水を待ち望んでおり…と権力を象徴する階層構造となっている。
映画では、外の世界に逃げても荒野以外なにもないことに気づいたフュリオサ一行が戻る、まさしく“最後の砦”だった。
ジョーに所有される5人の“ワイブス”
この砦でジョーと共に生活を送ってきたのが、若く美しい5人の妻“ワイブス”。脱ぐことのできない貞操帯をジョーに穿かされていることからもわかるように、妻と言っても健康なジョーの子どもを産むための母体として幽閉され、虐げられている被害者だ。そんな彼女たちは、救世主として手を差し伸べてきたフュリオサと外の世界へ逃れようとする。
スプレンディド・アングラード(ロージー・ハンティントン=ホワイトリー)、ケイパブル(ライリー・キーオ)、トースト・ザ・ノウイング(ゾーイ・クラヴィッツ)、ザ・ダグ(アビー・リー)、チード・ザ・フラジール(コートニー・イートン)という5人のワイブス。負けん気の強いトースト、皮肉屋なダグ、繊細なフラジールなど、それぞれが異なるキャラクターを持っており、個性豊かで魅力的な人物として描かれていた。
ジョーを神格化する私設軍隊“ウォー・ボーイズ”
一方、逃げたワイブスとフュリオサをジョーと共に追うのが、白塗りの男たち“ウォー・ボーイズ”だ。親から引き離され、ジョーの養子とされたウォー・ボーイズは「勇敢に散れば、英雄の館ヴァルハラに招かれる」という教義を信じるなど、洗脳によりジョーを神と崇めるカルト的戦闘集団。口に銀のスプレーを吹きつける儀式を行い、環境汚染により通常の半分ほどしか寿命がない命を投げ出してまで戦おうとする。
ウォー・ボーイズが住むシタデルの下層部にはハンドルで作られた祭壇があり、肌には車のパーツを模したスカリフィケーションが施されている。さらに両手の指を交差させるV8エンジンに見立てたポーズで「V8!V8!」と唱えるなど、彼らにとって欠かせない車にまつわるディテールもユニークだ。
そんなウォーボーイズのなかでも重要なキャラクターがニュークス(ニコラス・ホルト)。死期が迫った彼は輸血袋とされたマックスを連れフュリオサたちを追うが、ある出来事を機に自分が利用されていただけにすぎないことを理解。以降は彼女たちの仲間になり、物語における重要な役割を担った。
フュリオサ一行が目指す、かすかな希望“緑の地”
ジョーから逃れようとするフュリオサたちは、あてもなく荒野を走っているのではなく、“緑の地”を目指している。名前の通り、緑が生茂るこの地は、幼きフュリオサが生まれ育った場所。しかし、いくら車を走らせても、それらしき場所は見つからない。
かつての美しい土地は、数十年を経て、汚染によりカラスが飛び交う不気味な雰囲気の沼地へと姿を変えてしまっていたのだ。それを知ったフュリオサが砂丘に膝から崩れ落ち慟哭する一幕は、劇中きってのエモーショナルな名シーンだった。
フュリオサのかつての仲間“鉄馬の女たち”
この緑の地がすでにないことをフュリオサに教えたのが、かつて彼女と一緒に暮らしていた“鉄馬の女たち”。母権制集団の最後の継承者であり、銃で武装し、豊富な経験を生かした狡猾なスキルで生きながらえてきた屈強なバイカー集団でもある。
フュリオサと再会後は共に行動することになり、シタデルへの帰り道では次々と襲いかかるジョーの一味を命懸けで撃退するなど活躍。また緑豊かな頃を知っている貴重な人々で、汚染されていない穀物の種をワイブスに託すなど、未来への希望をつなぐ象徴的な存在だった。
今回紹介したキーワードは『マッドマックス:フュリオサ』にも絡んでくる要素。もちろん未見でも楽しめるが、前作『怒りのデス・ロード』をしっかりと予習復習してから新作に臨むと、より楽しめること間違いなしだ。
文/サンクレイオ翼