ジャッキー・チェンが語る、アクションと演技の両立「70歳になっても映画を作り続けたい」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ジャッキー・チェンが語る、アクションと演技の両立「70歳になっても映画を作り続けたい」

インタビュー

ジャッキー・チェンが語る、アクションと演技の両立「70歳になっても映画を作り続けたい」

1974年公開の初主演映画『タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道 序章』から半世紀。ジャッキー・チェン主演50周年を記念した作品『ライド・オン』が5月31日(金)についに日本公開を迎える。本作でジャッキーが演じるのは、かつては香港映画界の伝説的な存在でありながらケガによって一線を退いた元スタントマン、ルオ・ジーロン。スタントに命を懸けた結果、家族とは離ればなれになり、友人から譲り受けた愛馬・チートゥを心の支えに地味な仕事をしながら暮らしていたルオだったが、チートゥの所有権で問題が発生。悩んだ末、疎遠となっていた法学部に通う娘のシャオバオを頼ったことをきっかけで、失われていた親子関係が動き始める。

ジャッキー映画おなじみの乱闘や、過酷なスタントに再び挑戦するシーンなどアクション要素も盛りだくさんであるが、人間ドラマにも重きが置かれているのが特徴的な本作。このストーリーは、どのように構築されていったのだろうか?ジャッキー・チェン自身に、本作に込めたテーマや、“アクションも演技もできる俳優”へと変化していくことへの想いまで語ってもらった。

「全世界のアクションスタントマンにリスペクトを贈りたい」

今年で70歳のジャッキー・チェン。アクションのキレは健在!
今年で70歳のジャッキー・チェン。アクションのキレは健在![c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

本作は“スタントにこだわってきた男の人生”、“愛馬との絆”、そして“娘との失われていた家族愛”と、大きく3つのテーマが軸となっている。「主演50周年記念作品とは言え、ただ僕の一生を描くような映画を作ることが主題であれば、僕は出演したいと思わなかった」と前置きしつつも、作品を構築するにあたって愛馬チートゥとの関係を最も重要視したとジャッキーは説明する。そこには、アジアを代表するアクションスターであっても、常に新しい映画作りをしようとする彼のスタンスが大きく影響していた。

「監督で脚本を担当したラリー・ヤンは、たくさんのアクション映画を観て育った人物で、アクション映画を支えたスタントマンの皆さんをリスペクトする物語を描きたかったそうです。そこで、スタントマンの要素を主軸にしながら、相棒となる馬との絆、そして娘との家族愛を描いているわけですが、そのなかで僕が惹かれたのは、“馬との絆”でした。僕自身、これまでいくつものアクション映画を撮ってきましたが、馬との共演というのはいままで経験したことがなく、これは自分にとっても大きなチャレンジになると思えたからです。主人公と馬の関係は、父親と息子のようなイメージであり、演じるうえでも物語の大きな主軸にもなると感じました。スタントマンは、現在も僕自身が撮影の現場でやっていることだし、アクション監督としても何十年もやってきた。だからスタントマンを演じることは、僕にとっては“手を挙げる”くらいの苦労しかなかった。むしろ、この映画で一番難しかったのは、現場での馬との演技でしたね」。

3つのテーマが軸に感涙のドラマが描かれる
3つのテーマが軸に感涙のドラマが描かれる[c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

単なるスタントマンの物語であれば自ら主演を務めることはなかったのかもしれない。“馬との絆”が描かれることによって、ジャッキーはもう一つの軸となるスタントマンとして歩んだ人生をも演じたのだ。一方で自身がスタントマンを演じるにあたっては、大きなメッセージも込めたいと考えていた。

「もちろん、監督のラリー・ヤンと一緒にやるなら、彼が描きたかった『スタントマンをリスペクトすること』は、とても重要だと思いました。それは、僕自身がスタントマンの出身であると同時に、自分だけではアクション俳優のジャッキー・チェンが存在できないからです。一生懸命武術の鍛錬を積んできて、基本ができているからアクション映画を撮ることができているように思えますが、それだけではアクションシーンは撮れない。僕のアクションを支えてくれるスタントマンの皆さんがいることで、僕が世界各地でアクション映画に出演できたことは間違いないです。つまり彼らがいなければ、いまのジャッキー・チェンもいないわけです。だから僕はラリー・ヤンと一緒に、この映画に出演してスタントマンの生き方やこだわりを描くことによって、全世界のアクションスタントマンにリスペクトを贈りたいと思ったんです。そうした気持ちも大きかったことは間違いないです」。

「ルオの生活は、かつてあった僕と家族のリアルな生活と似ている」

スタントマン役のジャッキーは、本作で様々な姿に七変化!
スタントマン役のジャッキーは、本作で様々な姿に七変化![c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

ジャッキー演じる主人公のルオは、アクションスタントに命を懸け、リアリティのある撮影にこだわり続けた結果、家族との関係が破綻し、妻とは離婚することになってしまう。家族を顧みることができなかった男が、愛馬の存在をきっかけに、かつて失ってしまった家族との絆を取り戻そうという物語における家族関係の要素は、ある意味ジャッキー自身の自伝的な要素が強いポイントでもあるという。


「ルオの生活と、かつてあった僕と家族のリアルな生活は、とても似ているところがあるんです。それは、ハリウッドとはまったく異なる香港での映画の撮影と関係しています。例えば砂漠のシーンが必要となれば、ハリウッドであればロサンゼルスに足を伸ばせば砂漠のシーンを撮影することができる。さらに、スタジオではいろんな最新の撮影技術を取り入れているので、合成によって撮りたい場所を再現することもできるし、それこそ巨大なオープンセットでチャイナタウンをそのまま撮影所に作り出すこともできる。でも、香港の映画にはそんな予算がないので、砂漠のシーンを撮りたければ砂漠へ、アフリカのシーンが撮りたければアフリカに行くしかない。もちろん、豪華なセットを作るなんてことはできないから、できるだけロケで撮影することになる。そのような撮影方法の違いによって、僕たち撮影スタッフは家族と離ればなれになるわけです。1年の間に家族と一緒に過ごした日数は、1週間とか2週間程度というようなことが、これまでにたくさんありました。この映画で描かれる家族と距離ができてしまっているという描写は、家族と一緒にいることができなかったかつての自分と重なるところはありましたね」。

過去作のオマージュも満載な本作。この姿は『プロジェクト・イーグル』?
過去作のオマージュも満載な本作。この姿は『プロジェクト・イーグル』?[c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

その一方で、ロケを中心としたこの撮影方法によって、ハリウッド映画とはまったく違うものとして成立できたとジャッキーは続ける。「ハリウッドの映画は、映像として映っているものが本物か作り物なのかの区別がつかないわけですが、僕の映画はアクションシーンを含めて実際に撮影しに行ったものなので、すべてがリアルそのもの。そういう映像や作品を皆さんに届けることができたのは、ある意味ラッキーなのかもしれません」。

ジャッキーの新作は、とてつもなく泣けるらしい。『ライド・オン』特集【PR】

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