棚橋弘至が『ライド・オン』で共感した、父と娘の関係性。もしジャッキー・チェンとリングで対決するなら?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
棚橋弘至が『ライド・オン』で共感した、父と娘の関係性。もしジャッキー・チェンとリングで対決するなら?

インタビュー

棚橋弘至が『ライド・オン』で共感した、父と娘の関係性。もしジャッキー・チェンとリングで対決するなら?

5月31日(金)よりジャッキー・チェンの映画人生の集大成ともいえる『ライド・オン』がついに日本公開となる。本作でジャッキーが演じるのは、自身の人生を反映させた老スタントマン。疎遠となっていた娘との絆と、共に暮らしてきた愛馬とのやり取りを描いた作品となっている。

そんな本作の公開に合わせて、プロレス界随一のジャッキーファンを自認する、新日本プロレスの社長にして現役プロレスラーの棚橋弘至が、ファントークという名のリングに登場!ベテランの域に入ったプロレスラー生活のなかで、重なる部分が多かったという本作の感想から、「もしジャッキーとリングで対決するなら?」という夢の対戦シミュレーションまで、ジャッキーへの熱い想いを目一杯語ってもらった。

「ジャッキーの“いま”の全力を見せてくれているところが非常に尊い」

棚橋弘至がジャッキー・チェンの魅力を語りまくる!
棚橋弘至がジャッキー・チェンの魅力を語りまくる!撮影/興梠真穂

――最初に『ライド・オン』をご覧になっての率直な感想をお願いします。

棚橋「まずは、ジャッキーが元気でうれしかったです!昔に比べると、公開されるジャッキー映画の本数も少なくなったということもあって、観る機会も減っていたんですが、久しぶりに映画で活躍される姿を見たらとてもお元気で。『あ、ジャッキーだ!』という安心感がありましたね」

――これまでのジャッキー映画とはまた違った味わいがある映画でもありますね。

棚橋「ベテランの妙を見ましたね。疎遠になってしまった娘さんとの物語であり、愛馬との物語でもありながら、そこにジャッキーの往年のアクションやスタントという要素がミックスされていて。『上手いな』と思いました。僕もプロレスラーとして若いころは、力やスピード、勢いで行けていた部分も多々ありましたが、ケガの影響や年齢を重ねた最近だと、キャリアを積んだからこそ可能なテクニックやそのほかの巻き込み要素で試合に臨むことも増えました。今回の映画では、70歳を迎えたジャッキーの“いま”の全力を見せてくれているところが非常に尊い。自分と同じようなキャリアを重ねたからこその妙技を見せてもらえた感じもありました」

今年で70歳となったジャッキー。アクションのキレは健在!
今年で70歳となったジャッキー。アクションのキレは健在![c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

――そこには、演技派としてのジャッキーの印象もあるかもしれませんね。

棚橋「そうですね。本作の『娘の幼少期から仕事ばかりで、家族に無関心だった』というシチュエーションは、僕自身にも当てはまる部分があって。僕はいま、大学に通う20歳と18歳の子どもがいるんですが、小さくて育児がたいへんだったころ、家族に迷惑をかけていた自負があるんです。当時は僕の年齢が30歳前後で、新日本プロレスのチャンピオンとして、試合とプロモーションで全国を回っていて、ほとんど家にいなかったんです。だから、子どもたちとの距離感の難しさというのはとても共感しました。

いまは、子どもたちも大人になって、僕の仕事を理解してくれているんですが、映画でもそうした父と娘の関係性が描かれていたんですよね。その描写から、僕自身、希望を持つことができましたし、また再び『ジャッキーのようになりたい』と思わせてくれる内容になっていました。あと、僕も子どものころには、カッコよくユニークに戦う姿を観て『ジャッキーになりたい』って思っていたんですが、この歳になって『ライド・オン』を観て、違う意味で『ジャッキーのようになりたい』って思いましたね」

一人娘と愛馬とのドラマが描かれるのも特徴的な『ライド・オン』
一人娘と愛馬とのドラマが描かれるのも特徴的な『ライド・オン』[c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

「弱い部分や情けない部分に『頑張れ!』って応援が集まる」

――アクションシーンに関してはどのような感想を持たれましたか?

棚橋「アクションシーンもよかったですね。特にロッキングチェアを使って相手を倒すシーンがあったので、こういう日常のなかに置いてあるものを工夫して戦うのがジャッキー映画の醍醐味だなと改めて感じました。そういう”ジャッキーイズム“を観ることができてよかったです。それから、ジャッキー映画恒例のエンドロールでNG集が流れるのもしっかりと踏襲されていましたね。昔のジャッキー映画だと、スタントなしで危険なアクションをやって、そこで大ケガをしたシーンなんかもエンドロールで流れたりして。『こんなにも身体を張って映画を撮ってくれたんだ』という感謝の念もありながら、『こんな大ケガをして大丈夫なのか?』って心配することも多かったです。でも、今回はそんな危険なスタントはあまりない作品だったので、エンドロールは安心して観ることができました」

愛馬、チートゥとのコンビで迫力のスタントを繰り広げる
愛馬、チートゥとのコンビで迫力のスタントを繰り広げる[c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

――ほかに劇中で気になったところはありましたか?

棚橋「ジャッキーがあえてやっていると思うんですが、衰えた部分を見せる勇気が印象的でした。僕らプロレスラーは、常に虚勢を張っていたい、強い部分だけを見せたいと思ってしまうんです。でも、ジャッキーは強い部分だけじゃなく、弱い部分を見せることができる心の強さがあるなと。プロレスラーも若いうちは強く、カッコよくありたいという気持ちが先行するんですが、それだと観ている側はあまり感情移入できないんですよね。むしろ弱い部分や情けない部分に『頑張れ!』って応援が集まる。ジャッキーもそういった部分は理解していて、この映画を観ていると感情移入しちゃうんですよね」


――どんなシーンで、そうしたジャッキーの機微を感じられましたか?

棚橋「愛馬に乗ってジャンプするスタントを演じる場面で、走馬灯のように若いころを思い出して、スローモーションで突っ込んで止まるシーンですね。あれは実際だと数秒の出来事ですが、僕も同じように思うことがあるんです。例えば、試合中に若いころにできたことができなくなっていることに気づく時ですね。膝が曲がらないとか、トップロープを飛び越えたらフラついたとか。そこは重なるところがありました。さらに、CGを使わないことに誇りに思っていたジャッキーが、あの決断をする瞬間は、映画のなかのハイライトシーンでもあるなと思いました」

“新しいものを受け入れる”ことに学びがあったと語る
“新しいものを受け入れる”ことに学びがあったと語る撮影/興梠真穂

――変わらないといけない部分があるし、受け入れないといけない部分もあるということですよね。

棚橋「変わるのは怖いんですよ。そこにかつての成功体験があるから。それはプロレスもほかのことも一緒です。成功体験を否定して新しいものを作るのは、キャリアを重ねれば重ねるほど難しくなってくる。でも、ジャッキーが70歳にして新しいものを受け入れるというね。もう本当にいろんな年齢、男女を問わずに変わらずエネルギーをくれる人だなと思いました」

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■棚橋弘至
1976年生まれ、プロレスラー兼新日本プロレスリング代表取締役社長。大学時代よりレスリングを始め、1999年にプロデビュー。以後、IWGPヘビー級王座など多くのタイトルを獲得する。得意技は「ハイフライフロー」など。プロレスラーとして活躍する一方で、執筆や俳優など多岐にわたる活動を行っている。
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