棚橋弘至が『ライド・オン』で共感した、父と娘の関係性。もしジャッキー・チェンとリングで対決するなら?
「カッコいいと可愛いが同居するのは、僕とジャッキーの共通項です(笑)」
――棚橋さんのジャッキーとの出会いはどれくらいのタイミングですか?
棚橋「子どものころに『ドランクモンキー 酔拳』や『スネーキーモンキー 蛇拳』を観たのが出会いですね。僕は、ブルース・リーを観ていなくて歴史上の人物という感じなので、カンフー映画は完全にジャッキー世代です。だから、好きな映画も初期の拳法もので、最初は敵にコテンパンにやられるけど、独特の風貌の師匠に特訓してもらって、強くなってリベンジするという王道パターンが好きですね。ジャッキー映画を見続けるなかで印象に残ったのは、ハリウッドへの進出作になる『レッド・ブロンクス』ですかね。香港ですでに成功しているけど、ハリウッドに向かうチャレンジ精神は見習いたいです」
――棚橋さんは俳優として映画などにも出演されていますが、役者という立場から見たジャッキーの魅力はどこにあると思いますか?
棚橋「やっぱり、表情の豊かさです。喜怒哀楽の表情がすてきで、カッコいいシーン、怒っているシーン、『ライド・オン』だと娘と理解し合えないせつない表情とか、人を惹き付ける魅力があると思います。もちろん、ジャッキーらしい屈託のない笑顔も好きです。あと、カッコいいと可愛いが同居する表情ができる人は強いですね。ここは僕とジャッキーの共通項でもあると思っています(笑)。齢70でそれができるというのは、まだまだ希望を貰えます。
“ジャッキーイズム”の魅力という点では、見ている人に楽しんで貰おうという心意気も惹かれますね。自分のためだったら無茶はできないけど、誰かのため、映画を楽しみにしてくれる人がいるからこそ自分のリミッターを外せる。プロレスも自分のためだったら『ここでギブアップかな、3カウントかな』と諦めるかもしれないけど、会場が盛り上がっていて、声援が聞こえると息が上がっていてもまだ動けてしまう。そういう人のために頑張るエネルギーは、もしかしたらジャッキーの映画から学んだのかもしれないです」
「グラウンドでコツコツ有利なポジションを取りながら、打撃や関節技で攻める…」
――そんなジャッキーと俳優・棚橋弘至として共演するとなれば、どんな役をやってみたいですか?
棚橋「ジャッキーとのタッグチームがいいですね。刑事の凸凹コンビもので、ジャッキーはすごくできる刑事で、一緒に悪の組織を壊滅させるんだけど、僕はいつも足手まとい。ジャッキーと一緒に鍛えたりして、バキバキの武闘派でいきたいけど、僕はついつい食べちゃって、どんどん太っていって、コンビ解消みたいになってしまって。でも、最後にジャッキーが悪の組織と一人で戦うことになって、ジャッキーのピンチにバキバキに仕上がった僕が現れる…みたいな(笑)」
――それは、なかなか見応えがある刑事コメディ映画になりますね。一方で、夢の対決的な話になりますが、ジャッキーとプロレスのリングで対戦するとなったら、どんな戦い方をしたいですか?
棚橋「ジャッキーはタフだし、動きも早くて打撃もある。そうなると、組み付いて密着して、グラウンドでコツコツ有利なポジションを取りながら、打撃や関節技で攻める…というのは、現実的な戦い方過ぎますね(笑)。でも、ジャッキーとプロレスをするなら、やっぱりジャッキーのいいところを引き出したいです。ロープ際の攻防とか上手そうですよね。そうしたいい部分を見せてから、至近距離からスリングブレイドを決めて動きを止めて、トップロープからハイフライフローで決める感じですかね。でも、膝を立てて避けられそうだな〜」
――ジャッキーは状況判断が上手そうですからね。
棚橋「うちのヒールユニットが試合中にテーブルとかイスを出して攻撃してくるんですが、ジャッキーだったらそれを奪ってどう戦うのか見てみたいですね。きっとジャッキーだったら最大限に魅力的にイスや机を使うんでしょうね。うーん、わかりました!僕が、ジャッキーの要素を新日本プロレスのリングに持ち込んで、リングで華麗に戦ってみます(笑)。今後、急に酔拳を始めたりするかもなので、『ジャッキーが来た、ジャッキーが棚橋に降りてきている!』って実況してほしいです(笑)」
■棚橋弘至
1976年生まれ、プロレスラー兼新日本プロレスリング代表取締役社長。大学時代よりレスリングを始め、1999年にプロデビュー。以後、IWGPヘビー級王座など多くのタイトルを獲得する。得意技は「ハイフライフロー」など。プロレスラーとして活躍する一方で、執筆や俳優など多岐にわたる活動を行っている。