紫色のもふもふから、動物のハイブリッド、映画屈指の名悪役に不気味なお人形まで…映画で描かれてきた個性豊かな“想像のお友だち”

コラム

紫色のもふもふから、動物のハイブリッド、映画屈指の名悪役に不気味なお人形まで…映画で描かれてきた個性豊かな“想像のお友だち”

見えない誰かとおしゃべりをしたり、実在しない誰かの話をしたり、多くの子どもが心に抱いている“空想上のお友だち”。大人になると存在していたことすら忘れてしまいがちなこの「イマジナリーフレンド」を題材とした『ブルー きみは大丈夫』が公開中だ。

時に優しい友だちとして、そして時には恐ろしい存在として数々の映画で描かれてきたイマジナリーフレンドたち。かわいらしいものから完璧なイケメンまでその姿も様々なので、ここで個性豊かな“お友だち”を一部ネタバレを交えながら、紹介していきたい。

見た目も性格も様々なブルー&IFたち(『ブルー きみは大丈夫』)

大人になると忘れ去られてしまうイマジナリーフレンドの宿命が描かれる(『ブルー きみは大丈夫』)
大人になると忘れ去られてしまうイマジナリーフレンドの宿命が描かれる(『ブルー きみは大丈夫』)[c]2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

少女とイマジナリーフレンドの交流を描く『ブルー きみは大丈夫』。母を病気で亡くした12歳の少女ビー(ケイリー・フレミング)は、ある日、祖母の家で子どもにしか見えないという不思議な生き物ブルーと出会う。かつての友だちから忘れ去られ、もうすぐ消えてしまうというブルーのため、ビーは大人なのにブルーが見える隣人カル(ライアン・レイノルズ)と共に新たな友だちを探そうと奮闘する。

IFたちのまとめ役となる長老のルイス(『ブルー きみは大丈夫』)
IFたちのまとめ役となる長老のルイス(『ブルー きみは大丈夫』)[c]2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

紫色の体毛で覆われたもふもふなボディとちょっぴり抜けた性格がかわいらしいブルー。大人になってしまった友だちから忘れ去られてしまった不憫な存在だが、そんな悲しい思いもしているからこそ、かつての友だちを優しく抱きしめる健気な一面にグッとさせられてしまう。果たして彼は運命に逆らうことができるのだろうか?

【写真を見る】個性豊かな“想像のお友だち”がズラリ!(『ブルー きみは大丈夫』)
【写真を見る】個性豊かな“想像のお友だち”がズラリ!(『ブルー きみは大丈夫』)[c]2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

また本作にはブルーのほかにも空想の友だち=IF(イフ)が数多く登場。IFたちの最年長であるテディベアのルイスやブルーの相棒で美しいものが好きなブロッサム、冷静沈着な宇宙飛行士のスペースマン、アクティブな性格のバナナ、聞き上手なひまわりのサニーなど、イマジネーションによって作り上げられたキャラクターはみな個性豊かでユニークだ。

スーパーマン風の超個人的ヒーロー、キャプテン・エクセレント(『ペーパーマン』)

ライアン・レイノルズが中年男のイマジナリーフレンドに扮した『ペーパーマン』
ライアン・レイノルズが中年男のイマジナリーフレンドに扮した『ペーパーマン』[c]MPI Media Group/courtesy Everett Collection

『ブルー きみは大丈夫』ではイマジナリーフレンドが見えるお隣さんのカルを演じているライアン・レイノルズだが、『ペーパーマン』(09)ではイマジナリーフレンドを演じている。本作は売れない中年作家のリチャード(ジェフ・ダニエルズ)と女子高生アビー(エマ・ストーン)の交流を描いた人間ドラマだ。

リチャードが悩みを打ち明けるイマジナリーフレンドがレイノルズ扮するキャプテン・エクセレントだ。青いスーツに赤いマントというスーパーマンを思わせるビジュアルだが、もちろん地球を救ったりはせず、自暴自棄になりがちな主人公をなだめるだけ。そんなリチャードにとっての超個人的なヒーローだが、成長を見届け太陽に向かって飛んでいく去り際はクール。『ブルー きみは大丈夫』とあわせてチェックしたい1作だ。

イマジナリーフレンドの宿命を体現した最後が泣けるビンボン(『インサイド・ヘッド』)

8月1日(木)から公開される『インサイド・ヘッド2』の前作『インサイド・ヘッド』(15)。頭のなかに存在する感情たちを通して主人公の少女ライリーの成長を描く本作にも、ライリーのイマジナリーフレンドが登場する。

3歳の頃の動物にハマっていたライリーが生みだしたビンボンは、ネコとゾウを組み合わせたような見た目、肌の質感は綿アメ、泣き声はイルカ、涙はキャラメル味のキャンディというまさに想像力の賜物だ。

感情のヨロコビとカナシミが頭の司令部から放り出された先で出会ったビンボンは、ひょんなことからヨロコビと共に思い出の捨て場へと落ちてしまうと、ライリーにとって必要なヨロコビを脱出させるため、自ら犠牲になりそのまま消失。成長と共に忘れられてしまうイマジナリーフレンドの宿命を背負ったキャラクターだった。

意外な正体にびっくりのマーニー(『思い出のマーニー』)

ジョーン・G・ロビンソンによる同盟児童文学を米林宏昌監督がアニメ化した2014年のスタジオジブリ作品『思い出のマーニー』。本作で主人公の杏奈が、喘息の療養先にある湿っ地屋敷で出会った金髪の少女マーニーも、杏奈が「想像の友だちだった」と語るイマジナリーフレンドだ。

学校生活になじめず、心を閉ざしがちで人間関係に問題を抱える杏奈と良好な関係を築いていくマーニーだが、映画のラストで明かされるようにその正体は実は杏奈の祖母。母を早くに亡くした幼い杏奈を引き取っていたマーニーは自身の体験を杏奈に語っており、その記憶がマーニーという形で現れていたのだ。

交流の甲斐もあり、現実でも人とのつながりを持てるようになり、新たな友と歩み始める杏奈と、役目を終え別れを告げるマーニー。孫への愛情が時代を超えて伝わり、現実を動かすという夢のある美しい物語だった。

なお米林監督がジブリ退社後に立ち上げたスタジオポノックの最新作『屋根裏のラジャー』(23)もまたイマジナリーフレンドが題材。想像の産物である少年ラジャーが想像の世界の消滅に立ち向かうというイマジナリーフレンド視点で語られる珍しい作品だった。


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