埼玉・川口に次代を担う才能が集結!「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024」国際コンペティション10作品の見どころは?
錚々たる顔ぶれのインタビューも!『ミシェル・ゴンドリー DO IT YOURSELF!』
ミュージックビデオの世界から映画界入りを果たし、『エターナル・サンシャイン』(04)から『グッバイ、サマー』(15)まで、多くの映画ファンを魅了しているミシェル・ゴンドリー。彼のキャリア初期から10年にわたってアシスタントを務めてきたフランソワ・ネメタ監督がメガホンをとった『ミシェル・ゴンドリー DO IT YOURSELF!』は、そんな稀代の芸術家の創造の本質に迫るドキュメンタリー作品だ。
音楽に親しむ家庭に育ち、発明家の祖父を持つゴンドリー。“DIY精神”で世界に変革を起こし続けるゴンドリーの初期ミュージックビデオから新作の撮影現場、ひいては極私的映像や豊富なアーカイブ、家族や錚々たるアーティスト・協働者たちのインタビューを織り交ぜながら、彼の表現と創造の秘密が解き明かされていく。“ものづくり”に興味を持つ人は特に必見だ。
ドキュメンタリー作家が手掛けるリアルな劇映画『別れ』
初長編となったドキュメンタリー映画『You Name It』で注目を集めたトルコのハサン・デミルタシュ監督が、長編劇映画に挑んだ『別れ』。モスクワ国際映画祭をはじめ、複数の国際映画祭で上映されている本作が、本映画祭でアジアン・プレミアを迎える。
1990年、トルコ東部のクルドの村、マラディン。息子一家と暮らす年老いたハミットは、5年前に他界した妻の墓参りを日課としていた。しかし、ある時始まった政治的混乱によって平穏な生活に変化が生じ、ハミットは村を去るか残るかの選択を迫られることとなる。トルコで現実に起きている問題を、プロの俳優と地元住民による抑制された演技と、静謐なショットでリアリティたっぷりに描きだす点は、ドキュメンタリー作家ならでは。
実在の事件を題材にした重厚なエンタメ追走劇『連れ去り児』
インドで実際に起こった乳児誘拐事件を題材に、厳しい経済格差の現状や防犯意識がSNSなどを介して増幅されていく現代社会の闇をエンタテインメントとして描ききった『連れ去り児』。手掛けたのは、これが初長編作品となったカラン・テージパル監督。すでにヴェネチア国際映画祭など数々の国際映画祭でコンペティション部門に選出され、高い評価を集めている。
あるインドの田舎町。駅のホームで寝ていた女性ジャンパ・マハトの元から赤ん坊が連れ去られた。帰省の途中、駅に立ち寄ったグータムとラマーンの兄弟は、子どもを誘拐した犯人と間違われ、事件に巻き込まれていく。貧困層であるがゆえに疑いを持たれながらも、強い意志で子どものゆくえを探し続ける母親を演じ、北京映画祭で最優秀女優賞を獲得したミア・メルザの熱演に注目だ。
フランス映画らしい軽やかな社会派コメディ『私たちのストライキ』
フランスの人気コメディ映画シリーズ「Les Tuche」の脚本家としても知られるネシム・チカムイ監督がメガホンをとった長編第2作『私たちのストライキ』は、高級ホテルで働く労働者たちの戦いを描く社会派コメディ。
ホテル業界格付け最高位の“パラス”を持つ高級ホテルで客室係チームとして働く20歳のエヴァは、異なる年齢や背景を持つメンバーと共に働きながら劣悪な労働環境の現実に直面していく。高い水準を維持するため不眠不休で働きながらも、宿泊客から不可視の存在であることを求められる彼女たちは、より良い労働条件を得るためにストライキを行ない、ホテルの前で自分たちの「ファッション・ウィーク」を開催する。
老夫婦を通して静かに問いかける『日曜日』
ウズベキスタン国立芸術文化大学で映画・テレビ演出の修士号を取得したショキール・コリコヴ監督の初長編作品『日曜日』は、老夫婦の姿を通し、目まぐるしく変化する現代社会のなかで“人としてよく生きる”とはどういうことなのかを問いかける一本。すでに第25回上海国際映画祭でアジア・ニュー・タレント賞最優秀作品賞を受賞するなど、各国の映画祭で愛されている。
静かな村で暮らす老夫婦は、質素ながらも満ち足りた暮らしを送っていた。しかしある時、町で暮らしている息子が彼らの慣れ親しんだ古い家を壊して新築する計画を立てる。反対する老夫婦だったが息子はまったく意に介さず、彼らの元に次々と最新の電化製品が運び込まれてくる。点けられないガス台や騒音を立てない冷蔵庫、思うように操作できないテレビなど、戸惑う老夫婦の暮らしは少しずつ壊されていき…。
ここで紹介した国際コンペティション10作品は、会期中それぞれ2回ずつスクリーン上映が行われ、『Before It Ends(英題)』と『マリア・モンテッソーリ』『私たちのストライキ』を除く7作品はオンライン配信でも鑑賞が可能。詳しい上映スケジュールやチケット情報、オンライン配信の詳細等は、映画祭の公式サイトでチェックしてほしい。
文/久保田 和馬
日程:【スクリーン上映】7月13日(土)~21日(日)、【オンライン配信】7月20日(土)~24日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:https://www.skipcity-dcf.jp/