『お隣さんはヒトラー?』2人の老人の関係にはキュンが満載!辛酸なめ子が語る、すばらしき“おじいちゃん萌え”映画の世界
「ポルスキーにとって黒いバラは、幸せだったころを象徴するものです」
イラストには、辛酸が不器用なおじいさん2人のなかに優しさを感じるシーンを描いてもらった。1つ目は、ものも少ない殺風景な家に住むポルスキーが庭で黒いバラを丹精込めて育てている場面だ。「ポルスキーにとって黒いバラは、亡くなった家族との唯一の思い出で、幸せだったころを象徴するものです。いまはなんの生きがいもないけれど、黒いバラを育てることが彼の支えになっている。しかも、自分が料理に使った卵の殻をバラの肥料に使っているところが、なにひとつ無駄にしないお年寄りらしくていい」とのこと。
2つ目は、ヘルツォークの筆跡を鑑定して、彼がヒトラーであることを証明しようとたくらんだポスルキーが、ある出来事を機に「一筆頼みたい」と怯えながら頼むシーン。劇中では、ヘルツォークをヒトラーと疑うポルスキーが、過去のつらい経験から恐怖を覚える姿も描かれる。「本来なら仲良くなんかなれないし、頭を下げて頼むことなんかもしたくない。そこには様々な理由があるんだけど、このシーンから少しずつ、交流が始まっていく。その背景には、戦争を生き抜いた人の価値観や強さ。それともたまたま同じ年恰好の老人同士だったからなのか。いろいろと考えさらせられますね。また、ポルスキーが証拠をつかんだときの悪そうな笑顔と、ヘルツォークに最初話しかけたときの怯え顔のギャップもよかったです」。
3つ目は、ご近所付き合いでポルスキーを家に招いたヘルツォークが「クッキーを焼いた」といってお茶をごちそうするシーン。ポルスキーがヘルツォークの正体を暴く絶好のチャンス到来か!?と思いきや、「ヘルツォークはヒゲを生やして、イカついんですけど、そんな彼にクッキーを手作りする趣味というか、おもてなしの優しい心がある。ギャップ萌えしますね。それに、室内の装飾とか、ティーカップもエレガントでなんかかわいい(笑)ヘルツォークが『ファウスト』の詩を暗唱するシーンも、教養を感じさせて良かったです。実は学のあるおじいちゃんだったようです」と見た目と中身のギャップも萌えポイントとして高評価。
最後の4つ目は、ある出来事でショックを受け、酒を飲み過ぎたヘルツォークをポルスキーが世話をする場面。「甲斐甲斐しく世話をするところなど、まさに“老々介護”ならぬ、“老々介抱”なんですけど、2人のおじいさんがちょっとBLっぽくも見えて。ここも萌えポイントですね」。
なお、“おじいちゃん萌え”以外での本作の魅力を聞いてみたら、「ヒトラー映画なのかしらと思っていたら、おじいさんたちが出てきて、コメディのような展開。まったりしているのかと思ったら、隣人は一体何者なのか?ヒトラーかもしれない!と思って隣家に忍び込んだり。まるでスパイ映画のようなスリリングなシーンもある。見どころ満載なんです」と説明。「人間関係とか、友情といったものにとても執着する人っているじゃないですか。でも、そんなに執着しなくても、人間って必要な時に自分を支えてくれたり、寄り添ってくれる人に出会う。そんな縁ができるってことを伝えてくれる作品です。SNSでつながっている人間関係とか友達関係に疲れている人がこの映画を観るといいかもしれないですね」とアドバイスしてくれた。