『お隣さんはヒトラー?』2人の老人の関係にはキュンが満載!辛酸なめ子が語る、すばらしき“おじいちゃん萌え”映画の世界
「『モリのいる場所』のおじいさんはアリの群れを日がな1日観察しているところがかわいい」
もう1枚描いてもらったのは、オススメの“おじいちゃん萌え”映画。1本目の『ほんとうのピノッキオ』(19)は、マッテオ・ガローネ監督がロベルト・ベニーニと組んで、カルロ・コロディによる児童小説「ピノッキオの冒険」を、斬新にビジュアライズしたダークファンタジー。「ジェペットじいさんは、いつも薄汚れた服を着ていて、本当にかわいそうなんです。しかもピノッキオはやんちゃで自分勝手。おじいさんは翻弄されるんですけど、受け身で我慢強い。サメのお腹の中で暮らすはめになっているのに、自分なりに快適に暮らしていて。暮らしの知恵みたいなところで生きている。自分のことは疎かになっているところが、かわいそうでキュンとなりつつ、でもそこに萌えるんです」と熱く語る。
2本目の『モリのいる場所』(18)は、画家の熊谷守一と妻の日常を沖田修一監督がつづったヒューマンドラマ。「自宅の庭にいる虫の動きやらを観察し続けて外にほとんど出なかったという実在したおじいさんの話なんです。アリの群れを日がな1日観察している。そんなところがかわいいというか。少年のような好奇心にキュンとします。演じているのが山崎努さんで、服装もどこかひと昔前の日本のおじいさんで風流な感じがします」。
「『マイ・インターン』のロバート・デ・ニーロは、こんな人がいたらいいなという理想のおじいさん」
3本目は、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが共演した『マイ・インターン』(15)。若い女性CEOとその部下になった70歳のシニアインターンの、世代を超えた交流を描いたハートフルコメディだ。「おじいさんというよりはシニア世代が、若い女性が社長の会社にインターンで入社するお話なんです。だから、パソコンは使えないけど、割と自分のスタイルを持っていて。きちんとハンカチを持ち歩いたりして、ちょっと上質なおじいさんの流儀を若者に教えたり影響を与えていくみたいな。下心なしで女性社長の悩みを聞いたりして、安心感のあるおじいさん。こんな人がいたらいいなという理想のおじいさんをデ・ニーロが演じていて、キュンとさせてくれるんです」。
最後に“おじいちゃん萌え”の魅力を聞いたところ、「1人の老人が亡くなると、“図書館が1つなくなるようなもの”なんだそうです。それほど、老人には豊かな経験や知識や教養があるんです」と説明してくれた。「今回の『お隣さんはヒトラー?』は、直接的なナチスの話を描いているわけではないですが、ポルスキーの人生を通して、その体験や悲惨な歴史が描かれている。“おじいちゃん萌え”もなにか考えさせてくれるきっかけになるんじゃないかと思います」。
※山崎努の「崎」は「たつさき」が正式表記
文/前田かおり