実録ドラマに陰謀論が絡む都市伝説、衝撃のトンデモSFまで…『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』とあわせて観たい、月面着陸を題材にした映画たち
アポロ11号による人類初の月面着陸の裏側で繰り広げられた駆け引きを描くスカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム主演作『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(公開中)。ニール・アームストロング船長が記した「人類にとって偉大な一歩」が実はフェイク映像だったという衝撃的な本作は、虚実を巧みに組み合わせたワザありのエンタテインメントだ。本作の舞台となった月は、映画の黎明期から様々な形でスクリーンに描かれてきた人類憧れの別世界。本作にゆかりのある人物や仕掛けの月映画を紹介したい。
NASA職員たちが月面着陸に向けて奮闘する『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
人類を月へと送り込むNASAの国家的宇宙プロジェクト「アポロ計画」。ところが実験は失敗続きで、気づけば宇宙開発競争はライバルのソ連に大きく後れを取っていた。そんな状況を打破すべく、NASAは1969年に人類初の月面着陸を目指し、アポロ11号を打ち上げようとしていた。プロジェクトを世界にアピールするため雇われたやり手のPRマーケター、ケリー(ヨハンソン)は、NASAの発射責任者コール(テイタム)と対立しながらも、国民の宇宙熱を盛り上げていた。失敗が許されない月面着陸の衛星生中継を確実なものとするために、ケリーは政府筋から月面着陸を俳優にスタジオで演じさせ、テレビで放映するよう命じられる。
ニール・アームストロング船長の偉業を追体験させる『ファースト・マン』
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は全世界が固唾をのんで見守った偉業を支えた裏方たちの物語だが、劇中には「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」という名言で知られるアームストロング船長はじめ宇宙飛行士たちも登場する。『ファースト・マン』(18)は、そんなアームストロングの素顔を描いた伝記映画だ。監督、主演は『ラ・ラ・ランド』(16)で世界中を虜にしたデイミアン・チャゼルとライアン・ゴズリングのコンビ。不安定な操縦で宇宙飛行士候補から外されたアームストロングが、幼い娘の死をきっかけに月への飛行に全力で挑む姿が描かれる。
オープニングのテスト飛行シーンから映画は全編リアル志向。主観映像を取り混ぜながら、アームストロングのミッションを追体験させる構成になっている。アンダースコア(劇中の人物には聞こえない物語を盛り上げるための音楽)はほとんど使わず効果音中心という徹底ぶりで、月面着陸シーンなど思わず息を止めたくなる臨場感が味わえるワザありの作品だ。関連作として、本作に登場した伝説的パイロット、チャック・イエーガーを中心に宇宙計画を支えた飛行士やテストパイロットを描いた『ライトスタッフ』(83)もおすすめだ。
月からの電波を送受信するパラボラアンテナのセッティングに挑んだ人々の実録ドラマ『月のひつじ』
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は、人類初の月面到着を既成事実にするために“すべり止め”を作らせるお話だが、リアルの世界では放送に絡んだもう一つの問題が起きていた。月面到着のスケジュールがずれたため、着陸時の月の位置がヒューストンから見て地球の裏側になると判明。世紀の瞬間、月からの電波はアメリカに届かないことになったのだ。そこで白羽の矢が立ったのが、オーストラリアの小さな田舎町にあるパークス天文台のパラボラアンテナだった…。『月のひつじ』(00)は、月からの電波の送受信という偉業を支えた人々の、これまた実話の物語。想定外の大仕事に浮足立ちながら、アンテナのセッティングや停電など数々のトラブルに対処する関係者の姿をユーモアたっぷりに描き上げた、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』と表裏一体の作品なのだ。