ホラー大好きなセントチヒロ・チッチが“推す”『サユリ』「メジャー映画にうんざりしている、コアなファンもぶっ飛ぶ!」
「根岸季衣さん演じる春枝ばあちゃんは、強いうえにオシャレで憧れです!」
本作の見どころの一つとなっているのが芸歴50年を誇る大ベテラン、根岸季衣が演じた春枝ばあちゃんのインパクトだ。映画前半では認知症を患い、家の不穏さを感じ取るその様子が恐怖を駆り立てるが、中盤以降、突如として覚醒。ファンキーな格好に身を包み、タバコを片手にサユリへの復讐を誓い、孫の則雄に戦いの極意を叩き込んでいく。
『ドント・ブリーズ』(16)や『X エックス』(22)など、近年ハリウッドのホラー映画では老人が圧倒的な戦闘力を発揮する作品がトレンドになっている。チッチに“老人ホラー”のお気に入りを尋ねると、M.ナイト・シャマラン監督の『ヴィジット』(16)や、ブライアン・シンガー監督がプロデュースした『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』(14)などを挙げていく。「“老人ホラー”の醍醐味は、動きも喋りもゆっくりだと思い込んでいたお年寄りが、突然俊敏な動きをすることで生まれる、予期しない恐怖感ではないでしょうか」と魅力を分析。
「でも今回のおばあちゃんは、予想の裏の裏をかく動きで、恐怖心を通り越してもっとポジティブで情熱的な感情を呼び起こしてくれます。言葉の一つ一つがすごく心に沁みるし、とにかくカッコ良い。『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティスや、『101』のグレン・クローズみたいに、強いうえにオシャレで、『こういうおばあちゃんになりたい!』と憧れてしまいました」と惚れ惚れ語った。
「“家”の恐怖表現として、吹き抜けを効果的に使っているのも◎です」
数あるJホラー映画のなかでも、“家ホラー”の代名詞といえる清水崇監督の「呪怨」シリーズがお気に入りだというチッチは、本作についても恐怖の舞台となる“家”を注目ポイントとして挙げる。「家が本当に怖くて、登場人物があの家に入っていくだけで心配になってドキドキが止まりませんでした」。
劇中に登場する神木家の夢のマイホームは、傾斜地に建つ中古の一軒家。玄関が2階にあり、リビングのある1階から3階までが大きな吹き抜けになっており、ホラー映画特有の閉塞感とは対照的なつくりをしている。「Jホラー作品では家の恐怖表現として、階段や点滅する照明が使われているのをよく見ますが、本作ではそれらに加えて吹き抜けが効果的に使われていました。見上げるとよく見えるし、前と後、右と左だけじゃなくて上にも注意が必要。それも『呪怨』の玄関と共通している部分で、思わずキュンときました(笑)」と、ホラーファンならではの着眼点で“家ホラー”としての魅力を分析。
また、「“家”というちゃんと怖い場所を描きつつ、学校のシーンでは別のテイストのストーリーが描かれている。外に怖さを持っていかない感じが魅力的でした」と、ホラーだけではない複数のジャンルにまたがったエンタメ性の高さについても言及する。
映画の前半は少女の霊の恐怖を描く正統派ホラー映画で、中盤からはアツい師弟関係を描くアクション映画、そして後半は等身大の中学生を描いた甘酸っぱい青春映画に…とまさにエンタメの山盛り全部乗せ。ラーメンだったらヤサイマシマシアブラマシマシ…という状態だ。「とにかく展開が早くて、何度も『もう映画終わっちゃう!』って思ってしまったぐらいです(笑)。まるで何本もの映画を観ている気分になりました」。
5月8日生まれ、東京都出身。2015年より"楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー、セントチヒロ・チッチとして活動。2023年6月にグループ解散後、同年8月に加藤千尋名義で女優として活動を開始。
音楽活動としては、2022年8月よりCENT名義でソロプロジェクトを開始し、2023年には全国ツアーも実施。CENTとしての新曲「堂々らぶそんぐ」が各配信サービスにて配信中。