山田尚子監督最新作『きみの色』はIMAX推し!まばゆいほど美しい青春の“色と音”を全身で浴びる
青春の輝きが詰まったバンドサウンドに心が躍る!
これまでにも山田監督は、「けいおん!」シリーズや『リズと青い鳥』など、音と映像、キャラクターの感情が溶け合った名作を生みだしてきた。トツ子、きみ、ルイが3ピースバンド「しろねこ堂」を結成し、バンド活動に励みながら絆を深めていく姿を描く本作では、彼らが奏でるバンドサウンドも大きな醍醐味となっている。
「しろねこ堂」ではトツ子がピアノ、きみがボーカル&ギター、ルイがテルミン&オルガンを担当している。彼らが初めて音を重ねる場面はこちらがドキッとするほど衝撃的で、一緒にオリジナル曲を作ろうと挑戦していく過程も喜びとワクワク感に満ちている。宝物のような仲間と出会ったトツ子の高揚感が鼓動のように聴こえてくる場面もあり、どの音もいつでも完璧にチューニングされたサウンドを実現するIMAXで耳にすれば、没入感もたっぷり。
音楽を担当したのは、『映画 聲の形』や「チェンソーマン」などの牛尾憲輔。牛尾が作りあげた楽曲は、3人の等身大の姿を見事に投影した名曲ぞろいだ。例えばトツ子が担当した「水金地火木土天アーメン」について、山田監督が「トツ子の真っ直ぐな性格の明るさや芯の強さが、おもしろおかしく、かわいらしく表現されている」とオフィシャルインタビューで語っているように、曲自体が彼らそのものといった楽曲となっている。また世界最古の電子楽器である、テルミンの音にも注目。客席全体にオーディオを均等に分配したIMAXで聴けば、伸びやかでどこか暖かな味わいのある音に包まれたような陶酔感を与えてくれるだろう。
そしてボルテージが最高潮に達するのが、学園祭での初ライブシーンだ。それぞれの性格や想いを爆発させるようなライブシーンは、劇中の観客と一体となって手をあげて、リズムに乗りながら応援したくなるような場面で、最高にエモーショナル!エッジの効いたギターから始まり、聖歌隊に入っていた経験のあるきみの歌声、飛び跳ねるように歌うトツ子のコーラスなど、澄んだ深みのあるサウンドを叶えるスピーカーが用意されたIMAXならば、まるでライブ会場にいるような気持ちになってあらゆる音に鳥肌が立つこと必至。ズンズンという低音ビートも、お腹に響くような心地よさを体感できる。初声優に臨んだ鈴川、高石、木戸の熱演もすばらしく、IMAXで迫力のバンドサウンドやトツ子&きみ&ルイの吐息までを全身で浴びて、彼らの魂の音に胸を躍らせてほしい。
主題歌は、Mr.Childrenの「in the pocket」。作詞作曲を務めた桜井和寿は、「主人公たちにはその繊細さのまま、その柔らかさのまま、しなやかに強く飛び立ってほしい。そんな歌でありたいと、願いを込めてレコーディングをさせてもらった」とコメントしている。観終わったあとには、自分が生きている世界までが美しいものに見えてくるような感動作。主人公たちだけでなく、観客も優しく包み込むようなさわやかな主題歌までIMAXのサウンドで聴きとげ、青春の色と音に満ちた『きみの色』の世界に存分に浸ってみてはいかがだろう。
文/成田おり枝
※高石あかりの「高」は、「はしごだか」が正式表記