怖い!痛い!鮮血!ホラーの伝説的タイトルを継ぐ鬼才、フェデ・アルバレスの歩み
鬼才リドリー・スコット監督の出世作となった『エイリアン』(79)の誕生から45年、同シリーズの最新作『エイリアン:ロムルス』(公開中)がいよいよ登場。「エイリアン」シリーズはこれまで多くの名監督が取り組み、個性的な作品を送りだしてきたが、今回の新作について特筆すべきは、1作目のホラースピリットを正しく受け継ぐであろう作品であること。なにしろ、生みの親スコットが「クソ素晴らしい!」と称賛したほどなのだ。
『エイリアン:ロムルス』の監督を務めたフェデ・アルバレスは南米ウルグアイ出身で、おもにホラーの分野で実績を築いてきた注目株だ。ホラーといってもイメージは様々だが、彼の撮るホラーはとにかくパワフルでエモーショナル。そんな実力派アルバレスの代表的な作品を改めて振り返ってみよう。
恐怖色を徹底的に突き詰め、血しぶきが派手に上がる『死霊のはらわた』
まずはハリウッドデビュー作となった2013年の『死霊のはらわた』。サム・ライミ監督の同名デビュー作をリブートした作品で、オリジナルはホラーの定番としても名高い。そんな人気作を作り直すうえで、アルバレスはオリジナルのユーモアの要素を排除し、恐怖色を徹底的に突き詰めた。重度のドラッグ中毒を克服するために小屋にやってきた少女を主人公に据え、禁断症状の苦しみを悪霊とのバトルに重ねながらシリアスな状況を作りだした。
オリジナルはスプラッター映画のクラシックとしても有名で、アルバレスはその点をしっかり踏襲し、鮮血描写を効果的に挿入。悪霊に乗り移られた者による撲殺や刺殺の場面は、とにかく派手に血しぶきが上がる。とりわけ壮絶なのはクライマックス。悪霊を相手にしたヒロインのチェーンソーによる死闘で、噴水のように噴出する鮮血はショック指数をとてつもなく上げていた。
限定的な空間で若者たちをジワジワと追い込んでいく『ドント・ブリーズ』
続くハリウッド第2作『ドント・ブリーズ』(16)でアルバレスはオカルトから離れ、現実的な恐怖を追求。金に困っている若者3人組が強盗を企て、目の不自由な老いた退役軍人の家を襲撃する。ところが、この軍人は鋭い感覚を武器に、深夜の暗闇のなかで若者たちをジワジワと追い込んでいく。物語は犯行グループの1人の女性の視点で語られ、舞台は邸宅内、軍人はある意味、敵でもある。これは『エイリアン:ロムルス』と近い設定で、宇宙ステーションという限定空間を舞台にヒロインのサバイバルを描くという点で共通する。
血糊の量は『死霊のはらわた』ほど派手ではないし、惨殺描写も多くはないが、それでもバイオレンスは強烈。格闘はもちろん、サバイバルナイフや銃による打撃は肉体の痛みを確実に伝えるものであり、同時に軍人の戦闘スキルを伝える。さらに後半には彼の驚くべき秘密が明かされ、抑制が効いている分、衝撃の大きさもかなりのもの。
アルバレスは同作の続編『ドント・ブリーズ2』を2021年に発表。監督をロド・サヤゲスに譲り、脚本・製作に留まったこちらは、軍人側を主人公にしホラー色こそ薄れたが、敵の規模が大きくなった分、バイオレンスは激しくなった。銃や金槌、蛮刀を駆使した戦闘に加え、両目を指で抉る強烈な戦いっぷり。当然、スプラッター指数は前作より高い。