いよいよ30代に突入した山崎賢人!「キングダム」や「ゴールデンカムイ」、『斉木楠雄のΨ難』で磨いてきた独自の存在感に迫る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
いよいよ30代に突入した山崎賢人!「キングダム」や「ゴールデンカムイ」、『斉木楠雄のΨ難』で磨いてきた独自の存在感に迫る

コラム

いよいよ30代に突入した山崎賢人!「キングダム」や「ゴールデンカムイ」、『斉木楠雄のΨ難』で磨いてきた独自の存在感に迫る

「ありえない」を「ありえる」にする。いや、もっと「平然と目の前に存在させる」。それが山崎賢人という俳優だ。

と書き始めたところで、最新のニュースが飛び込んできた。花沢健吾による連載中の漫画「アンダーニンジャ」の実写映画化作品に主演するという。特報映像(があるということはほぼ完成しているのだろう)を見る限り、現代忍者という「ありえない」モチーフを生身の肉体で「ありえる」に変換させている。それはもはや驚くべきことではなく、山崎賢人ならば当然、と納得させるだけのパワーがいまの彼にはある。

漫画原作のキャラクターを「平然と目の前に存在させる」芝居力

この実現は、山崎が稀有な活劇的身体を有し、それに相応しい鍛錬を欠かさない…という次元にはもはや留まらない。特報映像の最後に添えられた忍者とは思えない気怠い風情のリアライズこそが、人物を「平然と目の前に存在させる」芝居力の証明である。私のような原作未読の者が見ても、どのようなキャラクターなのか瞬時に体感できる人間的リアリティが備わっている。

【写真を見る】山崎賢人が現代に生きる忍者という「ありえない」モチーフを人間的リアリティを持って演じる『アンダーニンジャ』
【写真を見る】山崎賢人が現代に生きる忍者という「ありえない」モチーフを人間的リアリティを持って演じる『アンダーニンジャ』[c]花沢健吾/講談社[c]2025「アンダーニンジャ」製作委員会

『アンダーニンジャ』の監督、福田雄一とは3度目の顔合わせだが、思えば両者の初邂逅作『斉木楠雄のΨ難』(17)はヤバかった。極めてマイペースな超能力高校生の、ほぼモノローグで進行する物語を、山崎は完璧に演じのけた。ああしたナンセンスは漫画やアニメならば成立もするが、こと実写ではスベる確率が非常に高い。しかし、山崎はやはり「平然と目の前に存在させる」ことができていた。おそらく原作、以前に漫画メディアに対する理解力が半端ないのである。

現代映画において漫画の実写化は、今後のメディア存続を支える最重要課題の一つであろう。そこでは絵をいかに「置き換えるか」が最初の難関となる。一時期、完コピというフォームが流行った。しかし、それは単に「プロがやるコスプレ」でしかなく、茶番でしかないものが大半だった。

山崎は、彼の映画をあまり観ていない人にとっても「漫画原作が多い俳優」と認識されている。ではなぜ、彼なのか。それは「置き換え」能力に優れているからである。

どこまで人間として「そこにいることができるか」を追求する地道なアプローチ

当たり役と言っていいメガヒットシリーズの第4作『キングダム 大将軍の帰還』(公開中)を観ても、主人公の信を体現する山崎の神通力は只事ではない。大沢たかお扮する大将軍、王騎のバトルステージがメインディッシュとなる本作で信はおもにそれを目撃し、見届ける役どころだが、「見る」という行為だけで、キャラクターのアイデンティティを表現し、揺らがぬ核として作品を支えている。

王騎将軍の死闘を見届ける役どころを完璧に全うした『キングダム 大将軍の帰還』
王騎将軍の死闘を見届ける役どころを完璧に全うした『キングダム 大将軍の帰還』[c]原泰久/集英社 [c]2024映画「キングダム」製作委員会

人柱(ひとばしら)、という表現が正しいかどうかはわからないが、山崎には我が身を捧げ、作品を下支えする聖なる腕力を感じる。綺麗なスタアでありながら、牽引するというよりは、キャスト・スタッフの支えとなって作品のクオリティを高めていく地道な尽力がそこにはある。

大将軍を目指す少年、信の成長を体現してきた(『キングダム 大将軍の帰還』)
大将軍を目指す少年、信の成長を体現してきた(『キングダム 大将軍の帰還』)[c]原泰久/集英社 [c]2024映画「キングダム」製作委員会

だから、漫画を実写に「置き換える」際も、派手なパフォーマンスではなく、どこまで人間として「そこにいることができるか」という地味な挑戦に心を砕いているように見受けられる。


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