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生放送中に惨劇が…最悪の“放送事故”を描くホラー『悪魔と夜ふかし』観客のリアルな感想は?

コラム

生放送中に惨劇が…最悪の“放送事故”を描くホラー『悪魔と夜ふかし』観客のリアルな感想は?

「イシナガキクエ」「このテープもってないですか?」など大森時生作品と呼応する世界観

ここまで紹介してきたコメントからもわかるように、多くの観客をフェイクドキュメンタリーの世界へ没入させた『悪魔と夜ふかし』。観客にこの上ないリアリティや恐怖心を植え付けた一番の要因は、やはり本作が“テレビ番組”という身近なメディアを題材にしたからにほかならない。

とりわけ劇中の「ナイト・オウルズ」のようなテレビバラエティの醍醐味を存分に活かしたオカルト番組は、1980年代から2000年代前半ごろにかけて日本でも数多く作られ、人気霊能力者が生まれるなど大ブームを巻き起こしたことは多くの人が知るところだろう。超常現象や心霊写真など、現実か虚構か定かではないギリギリのラインを攻める独特の空気感は、特にインターネットが未発達な時代に熱狂的な支持を獲得していた。

いまではすっかりそんな番組も少なくなってしまったが、それでも幼い頃に何気なくついていたテレビで見たオカルト番組から受けた強烈な記憶が、本作を観たことで呼び起こされたという声が多く寄せられていた。

「『USO JAPAN』や『奇跡体験!アンビリーバボー』のような本当か嘘かわからない番組が怖くて、印象に残っています」(30代・女性)
「『世にも奇妙な物語』の夢男の回の最後で、『今夜あなたの夢にお邪魔します』と顔が写り、眠れなくなった」(10代・女性)
「深夜に目が覚めてテレビをつけた時にやってた、大人向けのバラエティーがやけに怖かった」(30代・女性)
「宜保愛子さんがなにかの番組で『亡くなった人が夢に出てくる』というおまじないを視聴者にかけ、その晩に亡くなったペットのハムスターが本当に夢に出てきた」(30代・女性)

試写会の上映後には、大森時生プロデューサーのトークショーも行われた
試写会の上映後には、大森時生プロデューサーのトークショーも行われた

地上波ゴールデンタイムのオカルト番組は激減したものの、近年はフェイクドキュメンタリー作品が、深夜番組や動画配信サイトを中心に話題を集めている。今回の試写会では、「テレビ放送開始69年! このテープもってないですか?」や「TXQ FICTION/イシナガキクエを探しています」など“ファウンド・フッテージ”の手法を用いた番組を多数手がける、テレビ東京の大森時生プロデューサーが登壇するトークショーも開催。アンケートによれば、来場者の実に半数近くが大森プロデューサーのSNSをきっかけに本作に興味を持ったというのだから、その影響力は絶大だ。

そうしたこともあってか、「本作は、どんな作品が好きな人に刺さると思いますか?」というアンケートの質問には、「このテープ」や「イシナガキクエ」に加え、「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」や「祓除」、「SIX HACK」など大森が手掛けた作品のタイトルがずらりと並ぶ。また、「放送禁止」や「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」など往年の傑作フェイクドキュメンタリーから、『女神の継承』(21)や『呪詛』(22)といった近年注目を集めるアジアのフェイクドキュメンタリー映画のタイトルを挙げる人も。

ワクワク感をギュッと詰め込んだ、これぞ一級品のエンタテインメント!

あらゆるところに伏線が?ディテール豊かで考察がはかどる
あらゆるところに伏線が?ディテール豊かで考察がはかどる[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

ほかにも「宗教、空想など不気味な要素を詰め込んだような作品だから」(20代・男性)と、アリ・アスター監督作品好きにピッタリという声もあれば、「ファウンド・フッテージものを観たことがなさそうな人に観てほしい」(20代・女性)という意見も。意外なところでは、番組づくりの表と裏が見られるという点で、三谷幸喜監督の長編監督デビュー作だった傑作『ラヂオの時間』(97)と比較する声も見受けられた。

また、「家族など、ホラーが苦手な人にも観てほしい。コメディとしてもおもしろい!」(30代・女性)「ホラーに慣れていない人がホラー慣れするのに適しているので、友達や同僚に勧めたい」(20代・男性)といったコメントも多く見られ、普段ホラーを観ない人にも勧めたいという声が多かった。


ファウンド・フッテージの醍醐味である不気味さが、作品全体を包み込んでいる
ファウンド・フッテージの醍醐味である不気味さが、作品全体を包み込んでいる[c]2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

もちろん「たびたび挟まるノイズがまさにファウンド・フッテージものあるある。このジャンルならではの表現であり、全編を通して収録物であることを徹底した作りになっているからこそ、最後の展開にグッと引き込まれた」(20代・男性)と、目の肥えたファウンド・フッテージ好きも太鼓判を捺しているので、コアなファンの方もご安心を。

あの頃オカルト番組に感じたワクワク感をギュッと詰め込み、「一級品のエンタテインメント」(30代・男性)にまで昇華させた本作。臨場感あふれる劇場の映像と音響で、封印された衝撃映像を目撃してほしい!

文/久保田 和馬

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