『犯罪都市 PUNISHMENT』でマ・ドンソクと対決!正義と悪をよどみなく演じ分ける名優キム・ムヨル
社会派ドラマ「未成年裁判」の温情派判事でグローバル人気もゲット
ドラマや映画で着実に演技の幅を広げてきたキム・ムヨル。近年の活躍で特に注目されたのは、Netflixオリジナルシリーズ「未成年裁判」(22)だろう。ある地方裁判所の少年部を舞台に少年犯罪と向き合う人々の姿を描く法廷劇。キム・ムヨルが演じたのは罪を犯した少年でも更生のチャンスはあると信じて情をかけ、罪を償った少年には寄り添うような温厚な判事チャ・テジュ。そんな彼が、未成年であっても法の下で厳然と裁こうとする女性判事シム・ウンソクに反発しながらも、共に事件に向き合っていく。ウンソク役を演じるのはドラマ「シグナル」(16)や、今夏公開された話題作「密輸 1970」(23)などのキム・ヘス。圧の強いキャラクターが得意だが、本作ではニコリともしない冷徹な女性。一方、ムヨル演じるテジュは柔和な表情で緊張みなぎる場でもふわっと和ませるという役どころを担い、ドラマに絶妙な緩急をプラスしている。その後も、SFドラマ「グリッド」(22)、ミステリー『車輪』(22)、そしてソンガン主演の大ヒット作「Sweet Home -俺と世界の絶望-」のシーズン2(23)に出演するなど、もはや話題作には欠かせない俳優の1人になっている。
さらに7月31日からディズニープラスで配信されているドラマ「NO WAY OUT:ザ・ルーレット」にも出演。ムヨルが演じるのは、金のためなら依頼人を見捨てることもできる卑劣な弁護士。凶悪犯の法廷代理人に自らなるのだが、そこにはある政治家との裏取引があり、さらには凶悪犯に要らん知恵を付けたり、まるで信用ならないゲスっぽさが漂う。そしてこの作品の面白さはキャストが演技派揃い。凶悪犯を演じているのが、「梨泰院クラス」(20)で長家の会長を演じたユ・ジェミョンで、本作では下劣な極悪人にハマっている。そのほか、悪徳女性市長役には「密輸 1970」のヨム・ジョンア。そして、のっぴきならない状況で凶悪犯を守らなくてはならなくなった刑事役で主演のチョ・ジヌンなど錚々たる顔ぶれだ。そんな彼らが己の保身と欲望のために必死になる人間たちに扮して演技合戦を繰り広げる。そんななかで、ムヨルがどんな演技を見せるのか。凄まじい内容だが、機会があればぜひ!
さらにこれから公開されるキム・ムヨル出演作『対外比』も紹介しよう。再開発が迫る1992年の釜山を舞台に、国家を揺るがす権力闘争を描く政治サスペンス。『悪人伝』で組んだイ・ウォンテがメガホンを取っており、こちらも男たちの息詰まる闘いがスリリングに描かれる。キム・ムヨルが演じるのは血気盛んで頭も切れて行動も早いヤクザのピルド。彼が手を組むことになる政治家ヘウンを『工作 黒金星と呼ばれた男』(18)のチョ・ジヌン。ちなみに前述した『NO WAY OUT~』の主演だ。そして、黒幕スンテ役に『ソウルの春』(23)などのイ・ソンミン。実力派俳優たちと堂々互角に渡り合い、天下を獲るためにしのぎを削る男たちの闘いをリアルに演じてみせるキム・ムヨル。作品を観るたびに成長を見せている彼が、今後、どんな魅力を伸ばし、さらなる高みに昇っていくのか。楽しみで仕方がない。
文/前田かおり