MCUから最恐ホラー、「ONE PIECE」まで!唯一無二の“クセ顔俳優”デヴィッド・ダストマルチャンって?
ホラーフリークな一面など自身の人生が反映された『悪魔と夜ふかし』
このほかにも『プリズナーズ』(13)での不審者役を皮切りに、『ブレードランナー 2049』(17)、ハルコンネン家の側近を演じた『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)といったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品では常連に。また近年は『ブギーマン』(23)、『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』(23)といったホラー作品で物語に不穏な感じをもたらす“ナイスな顔”として引っ張りだことなったダストマルチャン。
俳優業の傍ら、自身のドラッグ中毒経験を基にした主演作『Animals(原題)』(14)や『All Creatures Here Below(原題)』(18)での脚本業やプロデューサー業にも手を広げており、今回の『悪魔と夜ふかし』では主演に加えて、製作総指揮も担当している。
1970年代に起こったテレビ史上最悪の放送事故が収録されたマスターテープが発見された――そんな興味をそそる触れ込みの『悪魔と夜ふかし』は、怪異が次々と巻き起こる深夜番組の全貌を、舞台裏の映像を交えながら映しだしていくオーストラリア産ファウンド・フッテージ・ホラー。
深夜のトークショー「ナイト・オウルズ」の司会者ジャック・デルロイ(ダストマルチャン)は軽妙なトークと人懐っこいキャラクターで人気を博しているが、どうしても時間帯視聴率1位を獲れず低迷の一途をたどっていた。追い討ちをかけるように最愛の妻を肺癌で亡くして以降、番組打ち切りの危機にまで追い込まれたジャックだったが、起死回生の一手として悪魔憑きの少女を生放送に出演させ、悪魔を呼びだすオカルトショーを実施。するとスタジオでは次々と超常現象が巻き起こる事態に…。
ダストマルチャンはホラー映画雑誌「ファンゴリア」でホラーホストについての記事を執筆するほどホストという役割への理解が深く、次々とジョークを飛ばす軽妙なトークや大袈裟な仕草はまさに欧米圏のテレビ番組の司会そのもの。コリン&キャメロン・ケアンズ監督曰く、ゲストに本気でインタビューをして、5〜10分ほどアドリブで話し続けていたというから驚きだ。
そんなテレビでの姿とは反対に負け犬のイメージがつく焦りから徐々に狂っていくニューロティックな一面など、テレビ業界で成功するため狂気に突き動かされるジャックの人物像を怪演。最愛の妻を失った悲しみをかき消すように仕事にのめり込む野心家な顔からは不安や悲しみ、恐怖と格闘する複雑な人物像が浮かび上がってくる。狡猾な悪魔に魅入られた結果招いてしまう予想だにしなかった事態に憔悴しきる様子まで嬉々として演じている。
海外のインタビューで「本作に参加する際に『これこそずっと自分が参加したかった映画のような気がする』と思った」と語ったダストマルチャン。保守的な地域の信心深い家庭で育ち、子どもの頃は悪魔という存在を身近に感じていたという生い立ちからドラッグという悪魔に苦しめられた経験、ジャック同様に欲しいものを手に入れるためならなんでも犠牲にすると誓った下積み時代まで、本作は彼の人生と通じるところも多く、それだけに思い入れも強いようだ。
ちなみにダストマルチャンは、幼い頃からアニメや映画、歴史といった日本の文化に触れ、高校時代には日本語を勉強し、自身が手掛けたコミック「Knights Vs. Samurai」に侍を登場させるほどのジャパノフィリア(日本びいき)。
家族ぐるみでファンだという「ONE PIECE」の実写ドラマ版では、秘密犯罪会社バロックワークスのエージェント、Mr.3役を演じることも決まっており、今後ますますの日本人にも馴染み深い存在となっていくだろう。まずは、公開中の『悪魔と夜ふかし』で唯一無二の魅力を堪能してみてほしい。
文/サンクレイオ翼