アカデミー賞主演男優賞を史上唯一3度受賞している名優ダニエル・デイ=ルイスが、息子のローナン・デイ=ルイスの長編監督デビュー作となる『Anemone』で映画界へ復帰を果たすことがわかった。「Variety」など全米複数メディアが報じている。
報道によれば『Anemone』は、父親と息子、兄弟の複雑な関係を通して家族の絆を探究する作品とのことで、ショーン・ビーンやサマンサ・モートン、サミュエル・ボトムリー、サフィア・オークリー=グリーンらが共演。デイ=ルイスと息子のローナン監督が共同で脚本を執筆したとのことで、デイ=ルイスが演技以外のかたちで映画に関わるのは、半世紀以上にわたるキャリアで初めてとなる。
1970年代前半に映画デビューを果たした後、舞台を中心に活動し、1980年代から本格的に映画俳優としてのキャリアをスタートさせたデイ=ルイス。脳性麻痺の画家を演じた『マイ・レフトフット』(89)でアカデミー賞主演男優賞に輝き、同作のために主人公と同じように左足だけで生活を試みるなど、徹底した役づくりに臨むメソッド演技の使い手として大きな注目を集めることに。
『ボクサー』(97)への出演を機に、複数の大作映画への出演オファーを断り映画界から退いたデイ=ルイスは、家族でイタリア・フィレンツェへわたり靴職人の道へ。しかしマーティン・スコセッシ監督からのオファーに応え『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)で復帰を果たすと、そのまま俳優業を継続し、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)で2度目のアカデミー賞主演男優賞を獲得。
そしてスティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』(12)で3度目のアカデミー賞主演男優賞受賞という偉業を成し遂げると、再び俳優業を休止。復帰作となった『ファントム・スレッド』(17)でアンダーソン監督と再タッグを組み、6度目のアカデミー賞主演男優賞ノミネートを果たすものの4度目の受賞には至らず。後に発表した声明によれば「区切りをつけるため」と、同作を最後に俳優業から引退した。
今年1月に行われたナショナル・ボード・オブ・レビューの授賞式で久々に公の場に姿を現したデイ=ルイスは、最優秀監督賞のプレゼンターを務め、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)のスコセッシ監督に同賞を授与。その際にスコセッシ監督は「もしかすると、また一緒にもう一本撮るかもしれない」と発言し、大きな話題を集めていた。
デイ=ルイスの俳優業復帰への機運が一気に高まっていたタイミングでの今回の報道。『Anemone』の撮影はすでにスタートしているようで、詳しい公開時期などについては未定。また、デイ=ルイスの今後についても明言されておらず、その動向に大いに注目が集まるところ。続報に乞うご期待!
文/久保田 和馬