大ヒットSNSミステリーの第3弾にして完結編となる『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』(公開中)。2018年の第1作『スマホを落としただけなのに』では、恋人の富田(田中圭)がタクシーの中でスマホを落としたのがきっかけで、猟奇的殺人犯の浦野(成田凌)から命をねらわれる派遣社員の麻美(北川景子)のサバイバルをスリリングに活写。続く2020年の続編『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』では、奇妙な友情(!?)で結ばれた刑事の加賀谷(千葉雄大)と獄中の浦野がタッグを組み、新たに起きた殺人事件に挑む展開が話題となった。
そして、あれから5年。今回の最終章ではなんと、刑務所内からサイバー攻撃を仕掛け、前作のラストでまんまと脱獄し海外へと逃亡した成田凌演じる浦野善治が主人公に。加賀谷は韓国のソウルに潜伏していた浦野が再び動きだしたことをいち早くキャッチするが、同じころ、日韓首脳会談を控えた日本政府に突如として大規模なサイバーテロが仕掛けられる。はたして、これは浦野の仕業なのか?
そんな比類なき殺人鬼のさらなるおぞましい顔に、日本と韓国を股にかけて迫るのが本作。そこでこのコラムでは、猟奇殺人鬼でありながら人の心を巧妙に操る天才的ブラックハッカーでもある浦野の、これまでの凶行と歪みまくった心の闇をプレイバックしていきたい。
人々を戦慄させる殺人鬼、浦野
「タクシーの中で拾ったと言うか、考えごとをしていてうっかり持ってきちゃったんです」。第1作ではそう言って、麻美に恋人のスマホの返却を口実に接触してきた浦野は、普段は見た目も清潔で、物腰も柔らかい好青年。持ち前のITスキルでランサムウェアの被害に遭った富田のスマホのロックを解除して信用を勝ち取るが、実はその素顔は長い黒髪の女性5人を次々に殺害し、神奈川県の丹沢山中に遺棄した連続殺人犯だった!
狡猾なクラッカーとしての能力を駆使し、SNS監視ソフトを使ってスマホからあらゆる情報を抜き取ったり、盗み見る浦野。幼少期に母親から「あんたなんか産まなきゃよかった!」と罵声を浴びせられ、激しい虐待を受けたことが原因で、母親と同じ長い黒髪の女性に捻れた愛情を抱くようになった彼は、富田のスマホに残された写真に写る長い黒髪の麻美に異常な執着を持つようになる。
それこそ第1作の浦野は、成田の怪演も手伝って実に気持ち悪かった。優雅なハワイアンがかかる薄暗い部屋で、被害者女性の髪で作ったロン毛のカツラを被り、PCの画面に向かう彼は最初のうちは顔がよく見えない。それだけに、黒髪を指に巻きつけながら麻美の行動を夢中で監視し、裸足で貧乏揺すりをする、果物がプリントされた青いシャツを纏うその姿が不気味に思えた。