勢い余って指を骨折!『イエローキッド』遠藤要のハンパない闘魂

インタビュー

勢い余って指を骨折!『イエローキッド』遠藤要のハンパない闘魂

映画館スタッフが選ぶ映画賞「映画館大賞」を実施しているシネマ・シンジケートが、今年最も将来を期待される新人監督作品「New Director/New Cinema 2010」に選んだのが、新鋭・真利子哲也監督作『イエローキッド』(1月30日公開)だ。主演は、『クローズZERO』(07)のワルメン役で注目された遠藤要。本作で目を見張る闘魂の演技を見せた彼が、衝撃の撮影秘話を語ってくれた。

彼が『イエローキッド』で演じたのは、痴呆症の祖母の面倒を見ながら暮らす、ボクサー志望の青年・田村。ある日、彼は新進気鋭の漫画家・服部と出会い、服部の新作「イエローキッド」に登場するヒーローのモデルとなることに。そこから田村と、漫画のヒーロー「イエローキッド」をめぐる2つの活劇がスピーディーに交錯していく。

もともとは、田村の先輩のワル、榎本役をオファーされた遠藤だが、面接で自ら「僕に主役の田村をやらせてください」と熱心に売り込み、見事に田村役をゲットした。「僕も田村と同じように親を亡くし、ずっと独りでやってきたので気持ちを共感できました。だからこそ田村を演じたいと思ったんです。実際に演じられてすごくうれしかったですね」。

圧巻なのは、田村が怒りをあらわにして、思い切り鉄骨を連打するシーンだ。「あのシーン、寸止めじゃなくて実は全部実際に打っているんです。だから僕、小指を骨折しちゃって。それって芝居としてどうなのってところですが(苦笑)」。

え!? 手が血まみれだったけど、本当に打っていたの! 「本番じゃないテストでもガンガンやってたら真利子監督がすぐに飛んできて、『当てなくていいです。音で修正するので』って言われて。でも、いろんな思いがあふれてきて止まらなくなってしまったんです。だから音はリアルにその時録音したものを使っています」。そ、それもすごい……。

そんな常に全力投球な彼が目指している俳優像とは? 「特にないんです。芝居を始めたのもあこがれとかではなかったから。18歳で母親を亡くし、19歳であえて立ち止まって過去を振り返った時、オレの夢って何だろうってわからなくなって」。

そこで彼は自分の母を題材に1本の脚本を書いて、友人たちと地元の老人ホームで芝居をしたという。「それは、大事な人を失って初めてその大切さに気付く、って内容でした。その時、老人ホームのおじいちゃんやおばあちゃんたちがすごく泣いてくれて。ありがとうって言われた瞬間、自分が感動してしまったんです。その時、オレ、芝居の世界で生きていこうと思いました」。

彼の役者スピリッツの根底に、そんな熱い思いがあったとは。「自信をなくし、芝居を嫌いになりそうな時もありますが、自分みたいに夢とか何もなかったヤツに夢を与えられるような大きな人間になりたいです」と語る遠藤。うーん、かっこいい!

『イエローキッド』はインディーズ映画ながらも才気溢れる作品だと前評判が非常に高い。間違いなく彼の代表作となるであろう本作を観て、遠藤要の心意気をしかと受け止めてほしい。【Movie Walker/山崎伸子】

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