タランティーノ、カウリスマキが所有する劇場も。映画ファンならいつかは行きたい世界のユニークな映画館を集めてみた

コラム

タランティーノ、カウリスマキが所有する劇場も。映画ファンならいつかは行きたい世界のユニークな映画館を集めてみた

現存する世界最古の映画館エデン・シアター(フランス)

現存する世界最古の劇場として知られているのが、フランス南部の町、ラ・シオタのエデン・シアター。ここは“映画の父”ことリュミエール兄弟が、1899年に映画の原型シネマトグラフ(活動写真)を上映した映画館として知られている。

現存する最古の映画館エデン・シアター
現存する最古の映画館エデン・シアターJcelestra, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Common

映画離れなどから1995年に一度閉館することになったが、近郊のマルセイユが2013年に欧州文化首都に選ばれたことで改修が認められ、クリームイエローの外観が鮮やかな現在の姿に生まれ変わった。

イギリス最古の劇場の一つ、エレクトリック・シネマ(イギリス)

イギリスでも最古の部類に入るロンドンのエレクトリック・シネマ
イギリスでも最古の部類に入るロンドンのエレクトリック・シネマMatt Brown, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

イギリス最古の映画館の一つと言われているのが、ロンドンのノッティング・ヒルに現存するエレクトリック・シネマ。1910年にオープンした映画館で、名前の通り、電気が供給された建造物としてもイギリス最初期の建物の一つとされている。

エレクトリック・シネマの座席には寝転がれる席も
エレクトリック・シネマの座席には寝転がれる席もalexander williams, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

レトロなソファーシートが並ぶシアター内の前方にはダブルベッドが設けられており、寝そべりながら映画を鑑賞できるのも特徴的だ。

世界で最も美しいトゥシンスキー・シアター(オランダ)

様々な建築様式が融合したアムステルダムのトゥシンスキー・シアター
様々な建築様式が融合したアムステルダムのトゥシンスキー・シアターThomas Laconis, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Common

世界で“最も美しい”と言われているのが、オランダのアムステルダムにあるトゥシンスキー・シアター。1921年にオープンしたこの劇場は、アムステルダム派をベースに、アール・デコやアール・ヌーヴォーなど多彩な建築様式が融合した絢爛豪華な建物となっている。

内部も豪華で数々のプレミアも行われる
内部も豪華で数々のプレミアも行われるRijksdienst voor het Cultureel Erfgoed, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

石造りの荘厳な外観が目を引くが、その内部は世界各国の様々なテイストがミックスされたゴージャスかつ摩訶不思議な空間に。四方八方、柄、装飾だらけのシアターは映画を観る前から圧倒されてしまいそう。

世界で最も有名なグローマンズ・チャイニーズ・シアター(アメリカ)

『MaXXXine(原題)』にも登場するハリウッドの象徴チャイニーズ・シアター
『MaXXXine(原題)』にも登場するハリウッドの象徴チャイニーズ・シアター[c] A24 / Courtesy Everett Collection

世界で最も有名な映画館として外せないのが、ハリウッド大通りに位置するグローマンズ・チャイニーズ・シアター。興行師シド・グローマンによって1927年に建てられた中国寺院風の建築が特徴的な映画館で、ロサンゼルスの歴史文化財にも登録されている。

手形でも有名なフォーコート・オブ・ザ・スターズが前庭となっている
手形でも有名なフォーコート・オブ・ザ・スターズが前庭となっている[c]Everett Collection/AFLO

ハリウッドスターを中心とする約300人の著名人の手形や足形が刻まれたセメントタイルが有名な前庭“フォーコート・オブ・ザ・スターズ”に加え、『スター・ウォーズ』をはじめとする数々の作品が初演を行うなど、まさにハリウッドの象徴的存在だ。

またハリウッドには、シド・グローマンがチャイニーズ・シアターより早い1922年に開業させた、エジプト建築がコンセプトのグローマンズ・エジプシャン・シアターも存在。こちらは、ハリウッド映画初のプレミア試写会が行われた歴史的な場所で、ドキュメンタリー『映画の殿堂:エジプシャン・シアターの100年史』(23)も話題となった。

世界で唯一の二層構造劇場、エルジン&ウィンター・ガーデン・シアター(カナダ)


カナダのトロントにあるエルジン&ウィンター・ガーデン・シアターは、エルジンが1913年に、ウィンター・ガーデンが1914年にオープンした歴史ある映画館。トロント国際映画祭の会場の一つでもあり、カナダの歴史遺産にも登録されている。

まるで森の中で映画を観ているかのような気持ちが味わえるウィンター・ガーデン・シアター
まるで森の中で映画を観ているかのような気持ちが味わえるウィンター・ガーデン・シアターCanmenwalker, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

2階建て構造の上層にあり、上流階級向けに開業したウィンター・ガーデンは、1928年から約60年間閉鎖され、1989年に復活したという経緯を持つ。その名の通り、内装が庭のようになっており、草木の装飾に加え、手書きの風景画や温かみのある光を放つランタンなどファンタジックな空間が広がっている。

エルジンのほうは『シェイプ・オブ・ウォーター』にも登場
エルジンのほうは『シェイプ・オブ・ウォーター』にも登場TM & [c] Fox Searchlight Pictures. All Rights reserved. /Courtesy Everett Collection

また、エルジンは『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)の主人公が劇場の上にあるアパートに住んでいるという設定で登場した。

世界最小(?)の移動式映画館ソル・シネマ(イギリス)

変わり種として最後に紹介したいのが、イギリスのソル・シネマ。この映画館はビンテージのキャラバンを改造した移動式シアターで、各地の様々なイベントに参加している。スペイン語で太陽を意味する”ソル”の通り、ソーラーパネルで集めた太陽光エネルギーを利用しており、定員は8名ほど。レトロな内装だが、音響はサラウンドシステムになっている。

世界にはこれら以外にも様々な特色を持った映画館が存在するので、冬休みに海外へ旅行する人は、ぜひともその土地の映画館に足を運び、映画を鑑賞してみてはいかがだろうか?

文/サンクレイオ翼

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