実写版『秒速5センチメートル』も待機!飛躍の2024年を経て今年30歳を迎える松村北斗に注目したい理由
歌番組でSixTONESを観るたびに、「あっ、あの松村北斗か…!」と驚いてしまう。映画やドラマで松村北斗を観ていると、SixTONESでパフォーマンスをする松村がイコールにならずに、一瞬、脳が混乱する。それだけ、“松村北斗”ではなく、役として作品に溶け込んでいるからだろう。そんな松村の俳優としての2024年の活躍は目覚ましいものだった。
恋人でも友だちでもない、“同志”という関係性を表現した『夜明けのすべて』
2024年、まず話題を呼んだのが映画『夜明けのすべて』だ。瀬尾まいこの同名小説を映画化。PMSで月に一度、どうしても苛立ちを抑えられない藤沢さん(上白石萌音)と、パニック障害を抱える山添くん(松村)。自分ではどうしようもできないものを抱える2人の間には、やがて同志のような感情が芽生え始める…というストーリー。恋人でも、友だちでもない、“同志”という関係性がポイントだ。
公開時に多くの人が言っていたが、こういったストーリーの場合、恋人や友だちになる場合が多い。男女ならばほぼ恋愛に発展するが、同志になるというのが大きい。いろんな壁を取っ払って、人間対人間としてコミュニケーションを取っている姿を演じるのはなかなか簡単にできるものではない。一言で「生きづらさを抱えている若者」と言っても、それをどう表現するか、共感を得るか、そして人にどうやってぶつかっていくか、というのは多かれ少なかれ難しいものだったのではないだろうか。松村はこの『夜明けのすべて』のほか、『キリエのうた』(23)、『ディア・ファミリー』(24)でも強い印象を残しており、第16回TAMA映画賞では最優秀新進男優賞を受賞した。
不器用なシングルファーザーの葛藤や戸惑い、ときめきまで体現した「西園寺さんは家事をしない」
2024年夏に放送され、多くの人の心を掴んだドラマ「西園寺さんは家事をしない」。バリバリ働き、マイホームも購入した独身の西園寺一妃(松本若菜)と、西園寺の職場に転職してきた楠見俊直と彼の4歳の娘がひょんなことから一つ屋根の下で暮らすことになり、そのなかで“偽家族”というちょっと変わった関係が育まれていく。家族というものに少なからず屈託を抱えている西園寺さんと楠見が、試行錯誤をしながら“家族”の形を模索していくストーリーに、心揺さぶられた人も多いはず。
この作品で松村は、シングルファーザーの楠見を演じた。父親役というのも新鮮だったが、ちょっと堅物で頑固で鈍い…という、いそうでいない人物をリアルに体現した。父親としての葛藤には涙し、西園寺さんへの想いに戸惑う姿にはみずみずしさを感じた。不器用さゆえに引き起こしてしまう、ときめきあるシーンの数々は暑すぎる夏のオアシスとなったのではないか。
また、倉田瑛茉演じる娘ルカとのやり取りに癒され、役柄を越えた本当の父と娘のような仲睦まじい姿にもほっこり。撮影を重ねながら、2人がどんどん仲良くなっていったのであろう空気感が観ている側にも伝わってきて口角が上がる。ドラマの公式Instagramアカウントでは、微笑ましい交流の様子もアップされていたが、役者として、人としての松村の温かみが感じられたことは間違いない。