【ネタバレレビュー】冒頭からサプライズすぎる…「ジークアクス」に期待する、新旧「ガンダム」の大きな橋渡し
「ガンダム」シリーズの最新作であり、テレビアニメシリーズの一部話数を劇場上映用に再構築した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』(公開中)。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」のスタジオカラーとサンライズが初めてタッグを組むことで、本作は公開前から大きな話題を呼んでいた。そんな前評判通り、公開から10日間で動員85万人、興行収入14億円を突破する大ヒットを記録している。
鶴巻和哉が監督、榎戸洋司と庵野秀明が脚本を手掛けている本作。鑑賞したファンの間では、強い口調での「ネタバレ厳禁」という触れ込みで大きな話題を呼んでいるが、果たしてどのような作品なのか?公式から一部ネタバレが解禁し始めた現時点で、作品の魅力と「ネタバレ厳禁」な要素に迫っていきたい。
※本記事は、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』のネタバレに大きく触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
無国籍な未来感が強い「ガンダム」とは異なる新鮮さ
宇宙に浮かぶスペース・コロニーで平穏な生活を送る女子高生アマテ・ユズリハ(通称マチュ)は、戦争難民で運び屋を生業としている少女ニャアンと出会い、非合法なモビルスーツ決闘競技「クランバトル」に参加することになる。事前情報として発表されていたのは、このあらすじ程度だったが、本作の大きな驚きとなるのは、映画のタイトルにもある「Beginning」のパートにあった。ただし、それに関してはまさに大きなネタバレとなるので、後述することにし、まずはメインパート部分の見どころを追っていこう。
舞台となるスペース・コロニー〈イズマ・コロニー〉は、これまでの「ガンダム」シリーズなどでお馴染みの円筒型の外観を持ち、外部に配置されたミラーによって太陽光を取り入れる「開放型スペース・コロニー」と呼ばれるタイプ。外観は一般的だが、特徴的なのは使われている言語が日本語であり、街並や生活面においてコロニー内に日本的文化が色濃く描かれていることだろう。コロニー内の標識や案内表示は漢字とひらがなが中心となっており、街並や制服のある学校、小さな神社がある風景なども含めて、現代の日常の延長にあるコロニーでの生活は、これまでの無国籍な未来感が強かった「ガンダム」シリーズとは異なる新鮮さを感じさせてくれる。
一方で、軍警察がモビルスーツを使用して治安維持を行うような状況に「ガンダム」らしさを感じさせつつ、作品世界ではモビルスーツは兵器として運用されるだけではなく、工事用重機などとして一般にも貸与や移譲、販売もされている。本作のモビルスーツによるバトルの要となる非合法なモビルスーツによる決闘競技「クランバトル」は、モビルスーツが軍用にのみ使われていないという、こうしたバックグラウンドがあって成立しているのだ。
その結果、現代社会からちょっとだけ発展した近未来的世界にモビルスーツという異物が存在する独自世界が構築され、さらに美術やキャラクターの色味が中間色を使った明るい雰囲気を醸し出していることもあり、硬質な印象が強い「ガンダム」シリーズのなかでもソフトかつライトな画作りのイメージとなっている。
それはキャラクターの演技や作画にも通じる部分でもある。適度なデフォルメ雰囲気や、ややオーバーめのアクション、演出的な「間」が作り出すキャラクターの演技からは独特のテンポ感が感じられるも本作の特徴だろう。そのせいか、マチュのキャラクター性が退屈な日常から抜けだし、人との関係や日常の壁を簡単に乗り越える勢いを持ち、もの凄いスピード感で状況を進めているはずが、キャラクターの見せ方のバランスのせいか性急に感じさせないのは演出の上手さにあると言えるだろう。
謎多き少年であるシュウジとの出会いを含め、マチュ、ニャアンの3人の関係性がどのように変化するのかが気になるという部分も作品的には大きな引きとなっている。そして、適度に散りばめられた複数の謎が提示されつつ、物語は一気に後半のクライマックスであるコロニー内のモビルスーツの戦闘とマチュの「クランバトル」の緒戦へとなだれ込む。
劇場クオリティのモビルスーツ戦に、テレビシリーズへの期待が高まる
モビルスーツ戦は、長い間消息を絶っていた謎のモビルスーツを捕らえるために出撃したGQuuuuuuX(ジークアクス)の行動に軍警察が介入。周囲を巻き込んでコロニー内で攻撃する軍警察のモビルスーツに対し、マチュはクランバトル用の機体に乗り込んでその横暴を止めようとするが揉み合って下層区域へ落下。そこで、GQuuuuuuXに乗り込むこととなる。
軍警察の機体を倒したマチュは、その後GQuuuuuuXでクランバトルに挑むことに。クランバトルは2機ひと組みで戦う仕組みとなっており、マチュはとある理由からシュウジをバトルに誘い、共に試合に臨むという展開が描かれていく。
モビルスーツのバトルでは、前半は重力が発生するコロニー内での戦い、後半はコロニーの外でのクランバトルが描かれることになる。そして、モビルスーツの戦いの描かれ方は、まさに劇場クオリティの密度感。重力のあるコロニー内と無重力のコロニーの外でのモビルスーツの動き方の差と身を翻すような動きを多用しつつ、射撃武装一辺倒ではなくコロニー内やクランバトルという状況から、近接武器を使うシチュエーションが多くなっていることも含めて、スピード感のあるバトルが繰り広げられる。機動性を活かしたモビルスーツの動かし方という点では、人間が身体性を活かして縦横無尽に動きまわるようなイメージで、従来の表現からギアが一段アップしたような感覚で観ることができた。また、主題歌や挿入歌のなどの楽曲が入るタイミングが絶妙で、バトルの展開をより盛り上げているのも印象的だ。
総じて、映像としてのクオリティの高さに満足させられる一本であることは間違いない。
しかし、である。こんな後半の見どころもちょっと霞んでしまうのが、本編の始まる前に描かれる「Beginning」パートにはあった。
ここからはネタバレが大きく入るので、未見の方はご注意を。