マッツがかわいい衝撃作も!?盲目的な恋に不倫、ドロドロの宮廷ドラマなど『愛を耕すひと』へ続くラブストーリーの経歴をチェック
風情あるプラハの街が夫婦のビターなドラマを彩る『プラハ』
チェコのプラハが舞台のデンマーク映画『プラハ』(06)。子どもの頃に家を出て以来疎遠だった父親の訃報を受け、遺体を引き取るために妻マジャ(スティーネ・スティーンゲーゼ)と共にプラハへと向かったクリストファー(ミケルセン)。彼には旅の目的がもう一つあり、それは浮気をしている妻と向き合うことだった。
父に対するわだかまりを抱えて生きてきたクリストファーと、そんな彼との間に大きな隔たりを感じていたマジャ。長い夫婦生活でできてしまった溝を修復することはできるのか?激しくぶつかり合うだけじゃなく、どこか諦めにも似た視線も向けるビターなドラマを風情あるプラハの街が美しく彩る。生前に暮らしていた家を訪れ、交流のあった人たちと触れ合ううちに父のことを理解し、虚ろだったクリストファーの心身に光が見える様子も味わい深い。
天涯孤独の身だった男が娘やかつての恋人と向き合う『アフター・ウェディング』
『アフター・ウェディング』(06)で再びビア作品に参加したミケルセン。インドで孤児院を運営するヤコブ(ミケルセン)は、多額の寄付を申し出た実業家ヨルゲン(ロルフ・ラスゴード)に会うため、故郷デンマークへ飛ぶ。ヨルゲンと面会するも寄付の件はいったん保留にさせてほしいと言われ、さらに週末に行われる娘の結婚式に招待されるなど戸惑うヤコブ。式場に向かった彼は、そこでヨルゲンの妻がかつての恋人ヘレネ(シセ・バベット・クヌッセン)であり、さらに花嫁のアナ(スティーネ・フィッシャー・クリステンセン)もヨルゲンの実子ではなく、自身の娘であることを知る。
娘がいたことに激しく動揺するヤコブだが、失われた時間を埋めるようにアナやヘレネと向き合っていく。その一方で、本作は物語のきっかけとなるヨルゲンの存在が特に際立つ。すべてがわかったうえで観返してみると、彼の行動理由や内なる葛藤が見えてより心に染みる作品に感じられる。
王と王妃、侍医の三角関係を描く宮廷ドラマ『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』
『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)はデンマーク王室最大のスキャンダルといわれる史実を基に、王と王妃、侍医の三角関係を描くラブストーリー。18世紀後半、ヨーロッパ各国で民主化が進むなか、デンマークではいまだ王制が根強く残り、貴族による圧政が敷かれていた。聡明だが精神を病んでいたデンマーク国王クリスチャン7世(ミケル・ボー・フォルスガード)は、ドイツ人医師のヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセ(ミケルセン)を気に入り、彼を新たな侍医として宮廷に迎え入れる。
国王の無二の親友となるストルーエンセだったが、孤独な王妃カロリーネ・マティルデ(アリシア・ヴィカンダー)とも愛し合う関係に。啓蒙思想に精通したストルーエンセは志を同じくするカロリーネと共鳴し、やがて国王から事実上の摂政に任命されたことで革新的な政治改革を執り行っていく。しかし、強引な彼の方針は貴族たちの反感を買い、やがてカロリーネとの禁断の関係も世間に知れ渡ることに…。
知性とユーモアがあり、気品と自信にあふれるストルーエンセは、ミケルセンにしか演じられないと思わされるほどの屈指のハマり役だ。中世貴族のファッションに身を包み、長髪を後ろで束ねた漫画やアニメからそのまま出てきたようなスタイルを完全にものにしている。
一方で、カロリーネへの好意を感づかれた仲間から「ランスロットみたいにはなるなよ」と忠告される場面も。「アーサー王伝説」に登場するランスロットは、王妃グィネヴィアと恋仲になってしまったことから国を混乱させてしまう円卓の騎士。思い返せば、ミケルセンのハリウッドデビュー作『キング・アーサー』(04)では同じく円卓の騎士の一人、トリスタンを演じていたが、伝承におけるトリスタンもまた「ロミオとジュリエット」の基になったといわれるなど恋によって悲運を迎えるキャラクター。ミケルセンと悲劇的な恋は切り離せないのかもしれない。