マッツがかわいい衝撃作も!?盲目的な恋に不倫、ドロドロの宮廷ドラマなど『愛を耕すひと』へ続くラブストーリーの経歴をチェック

コラム

マッツがかわいい衝撃作も!?盲目的な恋に不倫、ドロドロの宮廷ドラマなど『愛を耕すひと』へ続くラブストーリーの経歴をチェック

決して交わることのないグリンデルバルドとダンブルドアの想いにせつなくなる『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

ジョニー・デップに代わって、ミケルセンが闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドを演じた『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(22)。魔法界の新たな指導者になろうとするグリンデルバルドをニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)らが阻止しようと奮闘するのがメインストーリーだが、グリンデルバルドとアルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)先生の関係にも大きく踏み込んだ。

闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドを演じた『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドを演じた『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』[c]Everett Collection/AFLO

かつて共に魔法界を理想の世界にしようと語り合いながら、ある事件をきっかけに袂を分かっていたが、冒頭のカフェのシーンでは2人がいまも想い合っていることが示唆されている。しかし、選民思想を掲げるグリンデルバルドとは目指す世界があまりにもかけ離れていた。“血の誓い”によって互いを攻撃できないなか、その誓いが破られると一気に戦闘に。決闘の末、相手の胸に手を当て合うグリンデルバルドとダンブルドア。それぞれの想いを想像するだけでせつなくなる。

アルバス・ダンブルドアとは“血の誓い”によって互いを攻撃できない(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)
アルバス・ダンブルドアとは“血の誓い”によって互いを攻撃できない(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)[c]Everett Collection/AFLO

愛を知らなかった男の心に希望があふれていく『愛を耕すひと』

2月14日のバレンタインデーに公開を迎えた『愛を耕すひと』。貴族の称号を得るため主人公のケーレン大尉は、長年不可能とされてきた広大な荒野の開拓に着手する。しかしその前に立ちはだかるのは、自然の脅威と自らの勢力が衰えるのを恐れる有力者、フレデリック・デ・シンケル(シモン・ベンネビルーグ)。非道なまでの仕打ちに耐え続けるなか、ケーレンはデ・シンケルの元使用人で未亡人となったアン・バーバラ(アマンダ・コリン)、両親に捨てられたタタール人の少女アンマイ・ムス(メリナ・ハグバーグ)とひとつ屋根の下で暮らし始め、心を通わせていく。

“貴族の称号”を得るため、作物がなにも育たない荒野を開拓するルドヴィ・ケーレン大尉(『愛を耕すひと』)
“貴族の称号”を得るため、作物がなにも育たない荒野を開拓するルドヴィ・ケーレン大尉(『愛を耕すひと』)[c]2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB

ケーレンは地主と使用人との間にできた落とし子であり、父親に認知されることはなく、厄介払いのごとく軍に入隊させられていた。そのため、生まれてこの方、愛されることも愛することも知らずに孤独に生きてきた。もはや彼にとっては、貴族の称号を手にすることだけが生きる意味であり、他人を寄せ付けようともしない。そんな彼がアン・バーバラ、アンマイ・ムスとの日々を過ごすなかで、誰かを大切に想うことの大切さを知っていく。

アンマイ・ムスのことを我が子のように思い始める(『愛を耕すひと』)
アンマイ・ムスのことを我が子のように思い始める(『愛を耕すひと』)[c]2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB

荒んだケーレンの心に希望と愛があふれていき、満足そうに吹き抜ける風に身をゆだねる姿は、荒れ果てた大地に命が芽吹く光景ともリンク。口数が少なく、常に眉間にしわを寄せて険しい顔をしていながらも、その内の移ろいゆく心情変化を目や佇まいの表現だけでミケルセンは力強くかつ繊細に演じ切っている。

ケーレンの乾いた心に愛が満ちていく(『愛を耕すひと』)
ケーレンの乾いた心に愛が満ちていく(『愛を耕すひと』)[c]2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB


こうしてラブストーリーを振り返るだけでも様々な役柄やドラマを体現してきたことがわかる。なかには共感しづらい人物もいるが、そこに人間味をもたらしているのがマッツ・ミケルセンのすごさ。最新作『愛を耕すひと』をきっかけにその深淵にハマってほしい。

文/平尾嘉浩

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