原点にして最高峰!ウォルト・ディズニーを救った『白雪姫』の功績を振り返る
制作を進めながらアニメーターの育成にも尽力
ミッキーの短編などは、10名ほどのスタッフで制作できていたのだが、『白雪姫』のような長編となるとそうもいかない。結局は、おおよそ300人もの人間が雇われることとなる。さらにすごいのは、この『白雪姫』の製作当時は大恐慌中。そんななかでの制作は、仕事にあぶれていたアニメーターたちを救うことにもなった。しかもリアルな動きを学ばせるため、作業しながらアニメーターたちの訓練も同時に行っていたという。かくして腕を磨き上げたアニメーターたちを大量に育成したことで、のちのディズニー作品のクオリティをアップさせることにもつながっていった。300人で4年半もの歳月をかけながら、『白雪姫』はクリエイトされたのだ。
歴史に名を刻む名作となった『白雪姫』
当然のことながら予算はとっくにオーバーし、ウォルトは映画業界から「道楽」などと揶揄されながら、銀行からも金を借り、自宅までも担保にして制作に没頭。当時のお金で170万ドル(いまの価値で換算すると約85億円ほど)の製作費を最終的に費やしてしまう。文字通り、ウォルトは『白雪姫』が成功するか否かにより、スタジオの倒産どころか人生が破滅するかもしれない状況に身を置くこととなっていた。
しかし結果は、最終的に6100万ドルの興収(約3000億円)を上げ、世界的大ヒットを記録。借金をすべて返し、本社をバーバンクに引っ越しさせ、『ピノキオ』(40)や『ファンタジア』(40)などの名作を次々と世に放っていく。さらに『白雪姫』は世界中にアニメーションの素晴らしさを伝え、手塚治虫は50回以上も鑑賞したという。多くの人々にアニメーション作りの道へ進むキッカケを促すことになり、まさにアニメーションの歴史に名を刻む、草分け的存在になったのだ。
文/横森文
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