ダメダメでちょっと内気な“ミッキー”に、世界中が熱狂!?ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』はどんな映画?
タイプの異なるミッキーに感情移入!?最後の1秒まで楽しめるノンストップなエンタメ感
ここまでは『ミッキー17』を楽しむためのポイントを紹介してきたが、以降は本作をいち早く鑑賞したMOVIE WALKER PRESS編集部員によるレビューで、さらなる魅力と見どころに迫っていきたい。
原作はSF小説で、「記憶をそのままに再生」「舞台は氷の惑星」という設定に、どうやら硬派なSF映画なのか…と思いきや、いままでのポン・ジュノ監督のすべてが詰まったまさに集大成!近未来を舞台にしているが、映しだされるのは現実世界と地続きで、ブラックユーモアも満載。宮崎駿監督にインスパイアを受けている(本作で強く感じるのは『風の谷のナウシカ』)という発言にも頷ける、エンタメ感にもあふれたとにかくノンストップな展開に、137分があっという間に感じるはず。
壮大なミッションに挑んでいるのに、妙に覇気がないミッキー。それもそのはず、任務の内容は誰がどう聞いても「それは無理だろ…」という内容ばかり。“何分で死ぬのか試したい”と半笑いで命じ、ミッキーをゴミのように扱っている姿には滑稽でもあり悲しく見えるのだが、なんとも小気味よいリズムでコミカルに描かれるので、思わず笑ってしまう場面もあるから不思議だ。
次々に生まれ変わるミッキーたちが、見た目はまったく同じだが微妙に性格が違うという、パティンソンの演技分けにも驚くはず。数多く登場するミッキーのなかで、本作でメインに描かれるのは、“ミッキー17”と“ミッキー18”の2人。ミッキー17は、やばすぎる命令に耐え、もはや任務とはまったく関係ない超絶ハラスメントにも耐え…。なんでもやりすぎだろと思わず突っ込みたくなる。一方のミッキー18は、17とまったく正反対の性格。これが“建前と本音”のような関係になっていて、誰しもが持つこの二面性をミッキーに当てはめることで、2人が異なる行動を起こす場面でも、誰もが両者に感情移入できる構造になっているのが見事に感じられた。
そんな2人が逆襲をかけるのは、身勝手な権力者のマーシャル&イルファ。オーバーアクトも自然に感じるぐらいの強烈さに、同情の余地が1mmもない傍若無人ぶりが鑑賞後も頭から離れない。上下構造の格差を描くにあたって、この権力者たちが命じる無茶振りの数々は、突然方針が変わったり謎のイベントを強行したりと、仕事で絶対やられたくない“あるある”もしっかりおさえている。そして、最初から最後までずっと悪役でい続けてくれるからこそ、迎える結末には格別の爽快さを得られる。
これまたポン・ジュノ監督作らしい、魅力的なサブキャラクターたちが登場するのもポイント。詳細はぜひ本編で確認してほしいが、ミッキー視点での“逆襲エンタテインメント”として楽しみつつ、別視点で観ることでさらに本作の深みを感じられる。また個人的には、エンドクレジットでのある仕掛けにもグッと来るものがあり、最後の1秒まで余すことなく楽しめた。筆者と同様に、きっと鑑賞後にはもう一回観たくなっているはず!
ポン・ジュノ監督来日も決定!日本公開が待ち切れない
韓国では公開後4日間で動員100万人を超え、この動員100万人突破のペースは『オッペンハイマー』よりも早いなど、今後の興行収入記録樹立に期待が高まっている。そして、ロンドン、ベルリン、パリ、ソウルとワールドツアーを続けてきたポン・ジュノ監督が約5年ぶりに来日!ジャパンプレミアが開催されることも決定している。
すでに世界中の映画ファンや批評家たちを魅了し、北米をはじめとした世界30を超える国と地域では3月7日(金)に公開を迎える『ミッキー17』。IMAXに加え4D、Dolby Cinema、ScreenXとラージフォーマットでの上映も決定し、もう3月28日(金)の日本上陸が待ち切れないはず…!ポン・ジュノ監督の最新作を、劇場で体感しよう!
構成/MOVIE WALKER PRESS編集部 文/久保田和馬
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記