真っ黒な第75回ゴールデン・グローブ賞、視聴率減少のワケは?
第75回ゴールデン・グローブ賞(以下、GG賞)の授賞式が、現地時間1月7日にロサンゼルスのザ・ビバリー・ヒルトンで開催されたが、昨年よりも若干視聴率が低迷したことが分かった。
アメリカではドナルド・トランプ大統領誕生以来、人種や性による差別などが社会問題として大きくクローズアップされているが、昨年から映画界では重鎮プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ疑惑に端を発し、他の映画関係者にもセクハラ疑惑が勃発。
さらにそれに関する発言をした人にもその影響が飛び火し、ハリウッド屈指の良い人キャラで知られていたマット・デイモンまでもが一部団体から糾弾されるという憂き目に。まるで「魔女狩り」のような事態に陥っているとして、映画界全体を震撼させている。
そんな中、女優たちが性的な加害行動とその容認や沈黙を糾弾する「Time’s up!」の運動として、被害者との連帯を示すためにGG賞で黒いドレスを着用することを事前に呼びかけてきたが、ほとんどの女優たちが黒い衣装でレッドカーペットを歩くという、まるで「ハリウッドが喪に服している」ような異例の事態となった。
このように「言論の自由はどこに?」「エンタテインメントに政治色を持ち込むべきではない」という非難の声も挙がる中で行われた授賞式だが、米NBCテレビが誇る人気トーク番組「ザ・トゥナイト・ショー」のジミー・ファロンを司会に迎えた昨年がここ10年間で2番目の高視聴率を誇ったのに対し、セス・マイヤーズを司会に迎えた今年の視聴率は、前年比5%ダウンとなった。
調査会社ニールセンの情報によれば、視聴者数は昨年より約100万人ダウンの約1900万人だったが2016年よりは視聴者数が多く、また同賞のホストであるNBCテレビが授賞式の1時間前に行った恒例のレッドカーペットの生中継番組は1000万人の視聴者数を誇っており、激減というには至らなかった。
米FOXニュースなどが伝えたところによれば、視聴率減少の理由は明らかになっていないが、エンタテインメント性が強く、大スターが好まれる傾向にあるGG賞にもかかわらず、クリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』以外、ノミネート作に小粒の作品が多かったことも、ある程度の影響があるのかもしれない。
また「性差別」「人種差別」反対を支持する人々が同賞に関心を寄せる一方で、映画やテレビという“夢の世界”に現実を持ち込んだことで「エンタテインメントの真骨頂を奪われた」と感じる人々、トランプ大統領を支持する白人および男性至上主義者、富裕層もまだまだ多数いるのも現実。
「風潮を嫌う人々の視聴離れが、それらを支持する人々よりも多かった」と考える分析もあるようだが、エンタテインメントというくくりではアカデミー賞に次ぐ視聴率を誇っており、まだまだ関心の高さが伺える。
一連の動きが、現地時間3月4日に行われる第90回アカデミー賞の授賞式に一石を投じることになるのか、今から楽しみだ。
NY在住/JUNKO