1億人以上が訪れ、愛した日本の映画文化の中心地“日劇”が85年の歴史に幕

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1億人以上が訪れ、愛した日本の映画文化の中心地“日劇”が85年の歴史に幕

1933年に東京・有楽町にオープンして以来、日本の映画文化の中心地として第二次大戦や東京オリンピックなどの様々な歴史を見守りながら、数多くの映画を上映してきた映画館“日劇”が2018年2月4日、惜しまれつつも閉館の時を迎えた。

85年の歴史のフィナーレを飾る「さよなら日劇ラストショウ」では、日本が世界に誇る「ゴジラ」シリーズや黒澤明監督作品、世界中を熱狂させた「スター・ウォーズ」シリーズなどの超大作、またディズニーやスタジオジブリなどのアニメーション作品まで、映画文化を象徴する作品が一挙に上映。1月27日から9日間にわたり、連日大勢の映画ファンで賑わい閉館の花道を彩った。

そして“日劇”最後の上映作品となったのは、宮崎駿監督の『もののけ姫』。1997年夏に大ヒットを記録した同作は、公開当時には邦画・洋画含めて配給収入の日本新記録を樹立、189日間のロングラン上映が行われた。当時は現在の日劇3(旧日劇プラザ)で上映されていたが、この日は日本最大級のキャパシティを誇る日劇1(旧日本劇場)で上映が行われたのだ。

19時前に上映を終えると、満席の場内からおよそ940名の観客が思い思いに“日劇”を後にしていく。中にはロビーで記念撮影をしている者や、見送りに立つスタッフに挨拶をしている者も見受けられた。そして、すべての観客が“日劇”を去った19時23分にその扉が閉められると、佐藤望支配人を筆頭にしたスタッフが列をなして、劇場のある11階ホールに詰めかけた大勢の観衆に向けて、お礼の言葉を述べた。

「日劇は85年間で実に1億人以上のお客様に足を運んでいただきました。みなさまに愛され、今日まで上映を続けることができたこと心より感謝申し上げます。本日で日劇は閉館いたしますが、日劇の魂は3月19日(木)にオープンするTOHOシネマズ日比谷が引き継ぎますので、是非楽しみにお待ちいただければと思います。最後になりますが、85年間日劇を愛していただきまして誠にありがとうございました」。

深々とお辞儀をしたスタッフたちが劇場の中に戻っていくなか、最後まで観衆の前で目を閉じて物思いにふけっていた佐藤支配人。ゆっくりと場内に歩を進め扉を閉めると、奥からワッと歓声があがった。それに便乗するかのように、閉館の始終を見守り続けた観衆からは大きな拍手や声援が贈られ、その熱気はなかなか冷めることはなかった。

取材・文/久保田和馬

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